研究課題
肝がんは様々な病理学的な特徴やそれに伴った異なる腫瘍生物学的な振る舞いを示すが、その違いがどのような遺伝子異常に起因しているのかは不明な点が多い。この疑問にアプローチするために、Sleeping Beautyトランスポゾンマウス肝発がんモデルを用いて、発がんに要した遺伝子異常の組み合わせと形成された肝腫瘍の形質・生物学的な特徴の関係を検討してきた。その過程で、腫瘍において重要な役割を持つとされているNotchシグナルに注目し、Notchシグナルと伴に異なるシグナル伝達経路を活性化させると、それらNotchに随伴するシグナル伝達経路に特異的な特徴を示す肝がんが形成されることを見出した。Notchシグナルは腫瘍において、発がん、分化、上皮-間葉転換(EMT)、転移など多様な役割を果たすことが肝がん含め様々ながんで多数報告されているが、それら役割が個々の腫瘍においてどのように選択されているのかは不明であった。そこで本研究では、この随伴シグナルによりその役割が変わるNotchのコンテクスト依存的なはたらきに着目し、Notchシグナルの肝発がんにおける役割を明らかにする。Notch経路をRas-MAP kinase経路と同時に活性化すると多角形から紡錘形細胞からなる肉腫様の形態を示す肝腫瘍が形成された。これら肉腫様の腫瘍細胞は、通常の肝腫瘍ではその発現がみられない間葉系マーカーのビメンチンを発現していた。それら腫瘍はEMT関連遺伝子を高発現し、その発生にEMTが深く関与している可能性が強く示唆された。また、その発がん過程を経時的に詳細に検討してみると、肉腫様細胞への変化は遺伝子導入後短期間に起こっていることが明らかになったのため、形成された肉腫様の肝がんが肝細胞に由来しているのかを、AAV8-TBG-Cre / Rosa26 マウスを用いて更に検討している。
2: おおむね順調に進展している
肉腫様肝がんの発生について、予定通りその機序が明らかになりつつあるため。
肉腫様肝がんの知見を論文としてまとめ、発表する。
当初マウス肝腫瘍からの細胞株を樹立し、生体内の特性を培養環境下で検討することを計画していたが、細胞株を樹立することに難渋したため、研究期間の延長が必要になった。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Hepatology Communications
巻: 3 ページ: 697-715
10.1002/hep4.1327.