研究課題
ヒトリンパ管内皮細胞マーカーであるD2-40、血管内皮細胞マーカーであるCD31による免疫染色、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたヒト十二指腸乳頭部のリンパシステムの解析を行った。また、得られた解析手法を同一献体の胃体部壁にも応用し、それぞれについての壁内リンパ管の密度・分布を比較解析した。その結果、ヒト十二指腸乳頭部では毛細リンパ管が粘膜層~Oddi括約筋内外層にまで連続したリンパ管ネットワークを形成していた。さらに、解析を行った各層で得られた血管分布はリンパ管分布よりも高密度に認められていた。また、胃体部標本と十二指腸乳頭部の標本の比較では、十二指腸乳頭部のOddi括約筋外層では、胃体部の漿膜下層に比べてより高密度なリンパ管の分布が認められていた。得られたリンパ管をSEMで観察したところ、単層性の薄い表面平滑なリンパ管内皮細胞から構成されており、毛細リンパ管の構造を呈していた。また、得られた毛細リンパ管のネットワークは集束して総胆管側へ走行していた。以上の得られた結果より、粘膜層からOddi括約筋内外層にわたるリンパ管ネットワークが、初期リンパ吸収を担っており、十二指腸乳頭部癌のリンパ節転移に寄与しているものと考えられた。以上の得られた結果を論文として公表した。今後の展開として、最終目標である胆道系3Dリンパ管システムマップの描出のために、胆管側のデータの採取が必要である。そのための詳細な解析を解剖体から得られた組織標本だけでなく手術標本を用いて行っている。
3: やや遅れている
最終的な目標であるヒト肝十二指腸靭帯におけるリンパ管ネットワークの網羅的解析までは至っていないが、端緒としてその一部分である十二指腸乳頭部のリンパ管ネットワークについて解析することができた。しかし、3Dリンパ管システムマップ作成のための詳細なデータが未だ得られておらず、今後の研究の継続が必要である。
リンパ管システムマップ解析のために手術献体を用いてさらに網羅的な解析を行い、空間的体系を把握したリンパ管の局在・形態を明らかにする。これにより抽出されたデータを用いて3Dリンパシステムを提供し、臨床病理学的基盤データを構築する。
研究の遅延により当初予定していた支出を見送ったため、次年度使用額が生じた。次年度の実験消耗品及び成果報告にかかる旅費等に使用する予定である。
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Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences
巻: 24 ページ: 570~575
10.1002/jhbp.499