ヒト十二指腸乳頭部では、毛細リンパ管が粘膜層~Oddi括約筋内外層へ連続したリンパ管ネットワークを形成しており、血管分布自体もリンパ管分布よりも高頻度に認められていた。 十二指腸乳頭部癌が初期リンパ吸収の段階からリンパ節転移に寄与しており、そのメカニズムに十二指腸乳頭部に特異的なリンパシステムが関係していることを前年度までに英文論文、短報論文で公表した。この結果により、ヒト十二指腸乳頭部におけるリンパ管システムの複雑なネットワーク形成により、他の主要臓器に比べて膵・胆道癌ががん転移をきたしやすい微小環境にあることを、世界で初めて免疫組織化学と電子顕微鏡を用いて証明した。 また、これらの実験手法を用いて、肝十二指腸間膜内や肝内リンパ管系においても、複雑なリンパ管システムが存在し、かつがん転移に寄与しやすい微小環境を持ち合わせていることを発見し、いずれの結果についても国際英文誌に投稿中である。これらの結果により、ヒトにおけるがん転移メカニズムの初期リンパ管ニッチと、統合された肝胆道系リンパ管システムマップの全容解明の端緒をつけることができたと考えられる。
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