研究実績の概要 |
本研究では、がん細胞増殖・がん細胞と間質の相互作用・がんの悪性形質(がん細胞増殖、浸潤、転移など)に関わる脈管新生機序における時計遺伝子の役割を解析し、がんの浸潤性増殖機構の解明を目指している。近年、時計遺伝子の発現異常が乳癌をはじめ、様々ながんの発症に関与していることが注目されており、この現象に基づき、腫瘍の悪性形質を制御する時計遺伝子の機能を解明することにより、時計遺伝子を標的とした抗がん剤の開発を目標とする。 今年度は、三次元組織モデルを用いてがん細胞の浸潤性増殖機構について解析した。体外で、ヒト皮膚線維芽細胞およびリンパ管内皮細胞を積層培養することにより、リンパ管ネットワークの形成を伴う結合組織の作製ができ、生体内により近い微小環境の再現ができる。 上記三次元組織モデルに、培養ヒト胆管癌細胞(TFK-1)を添加した。24h、48h、72h、96h 経時的に組織を回収し、H&E(hematoxylin and eosin)染色および透過電子顕微鏡で観察を行った。経時的に観察・組織染色の結果により、添加 48h 後、TFK-1 細胞がリンパ管内への浸潤が認められた。また、透過電子顕微鏡で観察していた結果、癌細胞がリンパ管に浸潤した後、リンパ管内皮に接して腺管構造を示す胞巣が形成され、一部で癌細胞より分泌された粘液成分も認められた。添加 72h 後、リンパ管内に浸潤していた癌細胞が、リンパ管外間質への浸潤をはじめ、癌細胞の一部が胞巣より離れ、fibroblast様な形態的な変化(EMT, epithelial-mesenchymal transition)を伴いながら間質への浸潤が認められた。
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