研究課題/領域番号 |
17K17576
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田村 好拡 弘前大学, 医学部附属病院, 医員 (30770789)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Red Complex / アディポネクチン / 歯周病 / インスリン抵抗性 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は歯周病菌(Red Complex)がインスリン抵抗性に関わるメカニズムの解明である。その為、H29年度は岩木健康増進プロジェクトに参加し、1100名程度の口腔環境について検査を行った。測定項目は口腔環境として歯数・歯周病指数(CPI)・舌苔に含まれる口腔細菌数、う蝕歯数、舌圧、オーラルディアドコキネシスを測定した。全身的な調査項目として、年齢・BMI・喫煙歴・アルコール量・糖尿病の指標である血清血糖・HbA1c・HOMA-IR・血中インスリン濃度・アディポネクチンと炎症性サイトカインであるIL-1β・IL-6・TNF-αを測定した。口腔細菌については全細菌を網羅的に検出しているため、予想以上に時間がかかっており、現時点ではRed Complexについて分析が終了していない。 その為、予備研究として前年度までのデータを用い、口腔細菌中のRed Complexの割合が歯周病群は非歯周病群と比べて優位に高いことを確認した。また、Red Complexの割合が高いほどIL-1β、TNF-αが有意に高いことが認められた。糖尿病の指標である血清血糖、HbA1c、HOMA-IR、血中インスリン濃度との間に相関はなかったが、アディポネクチンとの間に有意に負の相関がみられる事が判明した。健康成人においてのみの検討であったが、Red Complexが増加すればアディポネクチンが低下することが示唆される事となった。しかし、前年度までのデータでは細菌は細菌属までの判定であり、細菌種までは特定されていないため、細菌種までのデータが揃った所で予備研究同様に統計学的に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔内細菌についてはT-RFLP法で網羅的に解析しているため、約1100名の住民全ての口腔内細菌を検出するのには予想以上に時間がかかっている。しかし、本研究の予備研究において細菌属においてはRed Complexとアディポネクチンの間に有意な負の相関がみられることが分かっているため、細菌種まで解析が終了次第、検討する予定である。 また、歯周病における炎症の程度をRed Complex比で評価しているが、そのような先行研究は少なく、今後のデータの蓄積が必要であることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Red Complexと炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-1βが有意に正の相関をしていることやアディポネクチンが有意に負の相関がしていることが分かったが、過剰な脂肪細胞によってもTNF-α、IL-1βが増加させ、アディポネクチンが低下することが先行研究で分かっている。その為、Red Complexが慢性持続性炎症を作り出し、炎症性サイトカインの持続産生を生み出すことを証明するため、BMIや内臓脂肪レベル等を交絡因子として再度検討する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究に参加している岩木健康増進プロジェクトは年1回の大規模なコホート研究であるが、より正確なデータの蓄積のため口腔内環境の測定の対象者を増やす必要がある。その為、消耗品や検査器具を多量に追加する必要があり、次年度の健診に備えて持ち越す必要があった。
使用計画:CPIプローブやオートクレーブを購入する予定である。
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