研究課題/領域番号 |
17K17577
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
松田 侑子 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (10598717)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ティーチャートレーニング / 保育学生 / 効果測定 |
研究実績の概要 |
2019年度に計画された研究の目的は,保育学生に導入したティーチャートレーニング(Teacher Training; 以下TT)による認知・行動面への効果がどのように推移・維持されるのかを縦断的に検討することであった。これまで実施されてきた,応用行動分析に基づいた研修やスキルトレーニングに関する実践研究は,短期的な効果を捉えたものが多く,それらがその後どの程度維持されるのかは十分に検討されていない。本研究ではこれを明らかにすることにより,TTの有用性について新たな示唆を得ることを目指す。 本研究では,スキルや知識,効力感等に関する得点について,TT介入実施前と,TT介入実施から2年間で行われた3回の調査時点(介入1年後に行ったフォローアップ前,フォローアップ直後,介入2年後),計4調査時点での比較を行った。調査対象者は,四年制大学1校の保育者養成課程に在籍する52名(介入前時点で2年生31名,3年生21名)である。介入前時点で3年生だった者は2年の間に卒業したため,今回は学年別に分析している。 その結果,全体的に,援助スキル・応用行動分析についての知識は,介入前に比して,介入後の3回の調査時点で高く維持されていた。TTで学んだ内容は一度身につくと,ある程度は定着するものと考えられる。ただし,介入前時点で3年生だった者は,就職後に,言語によるほめや励まし等を行うスキルが低下していた。実習とは異なり,保育者として毎日現場に立つようになると,一人ひとりに丁寧な言語的な声掛けを行う余裕がなくなることや,馴れが生じていくのかもしれない。また,介入前時点で2年生だった者は好ましくない行動に反応しないスキルや子どもやその行動にポジティブな注意・関わりを行うスキルが段階的に高まる傾向が示された。実習でスキルを使用する中で,経験的に理解されていった可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた内容は全て実施されているが,一連の研究を通じて課題が見出された。本研究の成果を振り返り,総括するためにも,学会参加や追加の調査を行いたいと考えている。これにより,本研究の意義が更に深まり,関連する研究領域の活性化が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果から,保育学生は,TTを通じて,子どもと関わるスキルや対処のレパートリーを増やし,行動を観察するための客観的な視点が獲得することが示された。しかし,こうしたスキルや知識が,保育者の専門性の向上やキャリア形成にどのような役割を果たすのかについて検討が不十分であり,TTの意義を明確にするためにも更なる調査の実施が必要となる。これについては,インターネット調査を使用して対応することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会への参加件数が少なかったこと,研究計画が円滑に進んだため当初計上していた出張旅費や研究補助への謝金が不要であったことが挙げられる。本研究の意義を更に明確なものとするため,残された課題を明らかにする必要が生じたことから,インターネット調査を行うことを予定している。
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