最終年度においては,これまでの介入から得られた課題を踏まえて,Teacher Training(以下,TT)の効果測定における有用な指標を開発することを目的とした。インターネット調査を実施し,294名から得られたデータについて因子分析を行ったところ,5下位尺度(関心指示,服従・一貫性のなさ,行動の強化,叱責,意図的な反応抑制)から構成され,一定の信頼性・妥当性が確認された。 研究全体を通じて,保育学生を対象にTTの導入を図り,その効果測定を行ってきた。TTでは,教師や保育者が対応の難しい子どもへの関わりについて,応用行動分析の視点から必要なスキル・知識を習得する。短期的な影響を把握するため,ウェイティングリストコントロールデザインを使用し,TTとその直後の実習を通じてTTで学んだスキルを学び,実践させることとした。介入前,実習後で比較したところ,想定されたスキル・知識は習得されていることが確認された。また,長期的な影響を検討したところ,特に不適切な行動への注目除去や注目・関与に関するスキルは,介入前に比して高く,それは2年を経ても維持されていた。他方,2年の間に卒業して保育者として働くようになった者は,指示に関するスキルについては,在学生とは異なり,低下していた。ここから,入職後のフォローアップの必要性が示されたといえる。 全体を通じて,保育者養成課程でTTを取り入れる有用性については明らかにできたが, 保育者の支援として定着させていく上での課題は大きく3つ挙げられる。第一に,今年度に作成された効果指標について,実際にTTを通じて変化が見られるのかといった点から妥当性を確認すること,第二に,指示スキルをより強化する要素をTTに取り入れること,第三に,保育者・保育学生だけではなく幼児の変化についても確認していくこと,である。
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