研究実績の概要 |
本研究ではこれまで着目されていなかった線維芽細胞を起点とした骨代謝制御機構の解明を目的とした。線維芽細胞と骨芽細胞を共培養し、メカニカルストレスとして伸展刺激を加え、経時的な遺伝子発現を分析した。伸展刺激した線維芽細胞ではInsulin-like growth factor binding proteins (IGFBP1-6) の発現が更新していた。共培養した骨芽細胞ではBMP、RUNX2、OSX、WNT3A 、IGFの骨芽細胞分化因子の発現が亢進し、RANKLやOPGは抑制された。伸展刺激によるIGFBPsの変動は、骨代謝に促進的に働くIGFBPs3,5と抑制的に働くIGFBP6は刺激後36~48時間にピークが出現した。IGFBP4は刺激後12時間にピークが出現した。共培養した骨芽細胞のALP活性を分析したところ、ALPは一旦抑制されたのちに上昇し、そのALPの上昇とIGFBP3,5,6の上昇は同期し、ALPの低下とIGFBP1,2,4の上昇は同期していた。この結果から、線維芽細胞が骨周囲細胞として骨芽細胞に影響を及ぼしており、骨微小環境を形成する主な細胞が線維芽細胞であることが示唆された。さらに、IGFBPsは骨微小環境調節の中心的因子であり、さらに6つのサブタイプがそれぞれ異なった機能を果たし、骨代謝の促進から抑制まで制御している可能性が示された。 IGFBPsはそれぞれのサブタイプごとに異なった機能を持ち、それぞれ異なるタイミングで発現が亢進し、骨代謝に関与していると考えられた。IGFBPsが多様性に富んだ骨代謝制御機構を有し、メカニカルストレスで誘導される骨代謝においてIGFBPsは骨芽細胞の分化制御のみならず、骨形成と骨吸収のバランスを制御している可能性が示唆された。
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