| 研究課題/領域番号 |
17K17580
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| 研究機関 | 岩手大学 |
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研究代表者 |
馬場 智子 岩手大学, 教育学部, 准教授 (60700391)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 復興教育 / エスノサイエンス / 文化的応答性を持つ教育 / STS |
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| 研究実績の概要 |
2018年度は、①岩手県の復興教育におけるエスノサイエンス実践に基づく教職課程科目のカリキュラム開発、②タイでの調査結果の書籍化（共著）、③国際シンポジウムの主催、を中心に行った。
１）岩手県の復興教育におけるエスノサイエンス実践に基づく教職課程科目のカリキュラム開発：復興教育・防災教育などに取り組んできた学校現場との協働による実践と、本研究をはじめとする、社会的背景と教科内容に関する各教科・領域の研究を結びつけることにより構築された「学校安全学」を教員養成カリキュラムで実践するものとして「学校安全学と防災教育」という教職必修科目の創設が決まり、科学教育と防災教育がどのようにリンクするべきかという観点から本科目のカリキュラム開発に関わった。
２）タイでの調査結果の書籍化（共著）：タイの科学教育の改革について、現時点での成果を共著『比較教育学原論』（協同出版、2019年（印刷中））にて書籍化した。
３）国際シンポジウムの主催：タイ教育省のカリキュラム改革担当部門との共同研究成果を公表した。本研究の主題である「アジア諸国のエスノサイエンスを科学教育に導入する際の手法や課題」について、日本では今後増加が見込まれている外国にルーツを持つ児童に対応した教科内容の研究が求められていること、そのために、本研究で得られた「具体的な科学的知識と社会的背景のリンク方法」について、タイ以外のアジア諸国での研究も必要とされていることが確認できた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、国内外のシンポジウムでの研究発表を行った。①2018年9月にシンポジウムを主催し、タイ教育省との共同研究成果を公表した。本シンポジウムは一般公開されたものである。教育実践者や行政担当者に成果を公表することで、今後増加が見込まれる外国にルーツを持つ児童に対応した教科内容が求められていること、そのために本研究で得られた「具体的な科学的知識と社会的背景のリンク方法」について、タイ以外のアジア諸国での研究も必要とされていることが確認できた。②2019年2月に国際シンポジウムで成果を発表した。本シンポジウムでは、岩手県の事例とタイ（コンケン）の事例比較を行い、日本・タイの両方で外国にルーツを持つ子どもの増加に伴って文化的応答性のある各教科の教育方法・内容の研究が求められており、エスノサイエンスを組み込んだ科学教育もその開発に重要な示唆を与えるとの評価を受けた。
第二に、本研究の成果を受け、教員養成カリキュラムでエスノサイエンスに関わる内容を含む「学校安全学と防災教育」を創設することができた（2019年より開講）。当初カリキュラムへの応用は3年目に想定していたが、地域復興に資する科学教育を行える教員の育成は喫緊の課題であること、エスノサイエンスの導入がアジア諸国で進んでいるという状況を踏まえ、本学が地域復興と連動したエスノサイエンス研究の先進校となるべく、カリキュラムへの応用研究を開始し、実践成果の蓄積を開始した。この点に関しては当初の予定より進行している。
タイでの調査について2018年度は成果公表が中心であったが、既に2019年度に地方での調査（2019年6月）とバンコクの先進校での調査を行うことが決まっている。総括すると、現地調査が3年目にまわった一方、カリキュラムへの応用や成果公表は当初の予定より進展した状況である。以上の理由から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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| 今後の研究の推進方策 |
1)世界教育学会(2019年8月発表予定、査読通過済）での成果発表。IPSTのエスノサイエンス担当者と環境教育担当者から「防災は環太平洋地域共通の課題であり、ぜひ岩手県の実践を共有したい」という依頼を受け、共同研究を開始（平成30年10月国際学会で発表予定）した。本発表は、その成果を元に、研究協力者であるDr. Chokchai Yuenyong（タイ・コンケン大学）と、調査協力校の教員とともに協働研究発表を行うものである。
2)「学校安全学と防災教育」実践の成果と課題の検証。2019年より教員養成カリキュラムに組み込んだ「学校安全学と防災教育」の成果と課題の検証を開始する。今年度は特に、社会的課題と教科内容のリンクについて学生の意識に与える影響に焦点を当てる。
3) タイ、バンコクおよび地方での学校調査。2019年6月と11月（学校側の予定に応じ、2020年になる可能性あり）に学校に赴き、エスノサイエンスを組み込んだ理科授業実践の成果と課題について実地調査を行う。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
1) 国際学会での発表の際の渡航・共同研究者招聘費。本研究の目的は、タイ・コンケン大学との共同研究の一環として岩手県の実践を環太平洋諸国で共有することである。岩手県ならびに岩手大学の防災と連動したエスノサイエンスの実践について各国の研究者のみならず、政策・実践に携わる実務者とも、日本の（防災教育を軸とした）エスノサイエンスの発信と改善に繋がる議論を行うことができるため、当学会での発表を実施する。本学会が2019年日本で開催されるため、研究者自身の渡航費は当初予定より減少するものの、共同研究者（Dr. Chokchai Yuenyong）の渡航費と滞在費に予算を使用する。
2) 必修化に向けたカリキュラム改善、特にグローバルな視点を取り入れたエスノサイエンス授業の実施を進める先進校での調査（タイと日本）。2019年度は、教育省が理想とする（あるいは政策より先進的な）バンコクの実践校での事例を調査し、その背景と要因を探る。日本での調査は、岩手大学でこれまで進められてきた事例の追跡調査を進める予定である。
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