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2017 年度 実施状況報告書

合金元素が窒素オーステナイトのフェライト変態へ及ぼす影響の包括的解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K17581
研究機関東北大学

研究代表者

佐藤 充孝  東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10547706)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード窒素オーステナイト / フェライト変態 / TRIP鋼
研究実績の概要

平成29年度では、純鉄およびFe-M (M : Si, Ti, V, Cr, Mo, Mn) 二元系合金を水素・アンモニア混合ガス雰囲気中における浸窒処理により0.3mass%の窒素を固溶させ、直ちに600‐750℃のソルトバス中に投入し、種々の時間等温保持後に氷塩水中に焼入れすることで試料を作製した。得られた試料に対し、OMおよびFE-SEMによる組織観察、ポイントカウンティングによるフェライト体積率測定、X線回折による相同定および残留オーステナイト体積率測定、EBSDによる結晶方位解析およびEPMAによる窒素濃度測定を行った。
組織観察結果から、750℃等温保持材では、旧オーステナイト粒界にアロトリオモルフフェライト(AF)が生成しており、長時間保持においてもAFが支配的であった。650℃等温保持材では、粒界にAFが見られたが、全体的にウィドマン-ステッテンフェライト(WF)が支配的であった。600℃等温保持材でもWFの生成が支配的であったが、より微細なWFが生成していた。
結晶方位解析では、AFは接している母相の内、一方と5°以内のずれ角でK-S関係を有し、K-S関係を持たない粒側に成長することが明らかとなった。一方、WFは母相と5°以内のずれ角でK-S関係を有しており、母相と整合界面を有していた。これらの結果は、Fe-C系合金で報告されている傾向と同じであった。
EPMAによる窒素濃度測定では、750℃等温保持材ではおよそAe3と一致していた。一方、650℃変態材ではAe3に達しておらず、エネルギー散逸が起きていることが示唆された。エネルギー散逸が生じる要因として、fcc→bccの格子変化に伴って界面での原子移動時に生じる界面摩擦やソリュートドラッグ効果、変態に伴うひずみエネルギーなどが挙げられる。今後、より詳細な窒素濃度測定を行い、エネルギー散逸の原因を調査していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度の研究計画として、1、窒化物生成傾向が異なる置換型元素を添加したFe-M (M : Si, Ti, V, Cr, Mo, Mn) 二元系合金に対し、試料表面から窒素を拡散侵入させる浸窒処理を施すことにより、高窒素オーステナイトを得る。2、ガス窒化炉を用い、窒素ポテンシャルを制御することにより、全合金において0.3 mass%の窒素量を実現する。各合金において同じ窒素含有量となる合成条件の最適化を行うために焼入れを行い、組織観察によるボイド生成状況、組成分析による含有窒素量の評価を行う。3、最適化された合成条件を元に、高窒素オーステナイトをオーステナイト+フェライト二相域にて等温保持することによりフェライト変態させ、変態温度および保持時間を変化させる。4、得られたフェライト変態材に対し、OM、SEMおよびTEMによる組織観察およびX線回折を行い、生成相の形態、サイズおよび分率、析出物の有無を評価する。5、生成するフェライト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの結晶方位関係をEBSD解析にて明らかにし、窒素および置換型合金元素の分布・定量をEPMAおよび3DAPにて評価することを計画としていた。
これらの計画のうち、純鉄においては計画通りに実験およびデータの取得が進んでおり、解析を進めている。合金添加材に関しては、浸窒条件の最適化までが終了し、今後フェライト変態材の作製と各種評価が必要であるが、測定方法やデータの解析方法に関しては純鉄にて正確なデータが得られていることが確認されているので、それほど時間を掛けずに実験の遂行が可能である。
以上の点より、本研究は初期の計画通りに進行していると考えられる。

今後の研究の推進方策

平成30年度も当初の計画通りに実験を進めていく。等温保持時間の増加に伴い析出が予想される合金窒化物の測定として、XAFS、SAXSを予定しているが、測定機器の準備は完了しており、放射光施設への課題申請の採択待ちの状況である。課題が採択されるまでは、測定時間が多少長くなるが、ラボ機での測定を行うことでデータの取得を進めていく。
また、変態材の機械特性評価を引張試験にて行うが、実験装置の立ち上げは昨年度末に完了しており、その他のデータの取得がほぼ終了しているFe-0.3N材から引張試験を行い、その他の合金元素添加材も試料ができ次第、機械特性の評価を行う。
また、昨年度までで取得したFe-N2元系合金のフェライト変態は、これまでに報告例の無い研究であることから、論文投稿および学会発表等を精力的に行っていく。

次年度使用額が生じた理由

今年度に前倒し請求を行い作製したXAFS用微動ステージおよびXAFS用試料ホルダが、作製途中段階での仕様変更により当初の予算よりも低価で作製することができたため、その差額分が次年度使用額として生じた。


次年度使用料は、放射光施設における施設使用料(例えば、SPring-8における使用料・定額分:1シフト(8時間)あたり 10,560円 +消耗品代)のための費用として充当し、追加の課題申請を行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 窒素マルテンサイトの逆変態挙動に及ぼす合金元素添加の影響2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤充孝,松本宗,宮本吾郎,古原忠
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第175回春季講演大会
  • [学会発表] Fe-1M-0.3mass%N(M : Si, Cr, Mo)のベイナイト変態挙動2018

    • 著者名/発表者名
      佐藤充孝,島谷将太,宮本吾郎,古原忠
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第175回春季講演大会
  • [学会発表] 鉄-窒素マルテンサイト組織からのオーステナイト逆変態挙動2017

    • 著者名/発表者名
      松本宗,佐藤充孝,宮本吾郎,古原忠
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第174回秋季講演大会
  • [学会発表] 低窒素鋼のベイナイト変態に及ぼす合金元素の影響2017

    • 著者名/発表者名
      島谷将太,佐藤充孝,宮本吾郎,古原忠
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第174回秋季講演大会
  • [学会発表] Fe-1M-0.3mass%N (M : Si, Cr, Mn, Mo)マルテンサイトの焼戻し挙動2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤充孝,古原忠
    • 学会等名
      日本鉄鋼協会第174回秋季講演大会
  • [学会発表] Tempering behavior of iron-nitrogen-based matensite2017

    • 著者名/発表者名
      Mitsutaka Sato,Tadashi Furuhara
    • 学会等名
      The 5th International Symposium on Steel Science
    • 国際学会
  • [学会発表] Fe-0.3mass%N-1M(M : Mn,Mo)マルテンサイト組織からのオーステナイト逆変態挙動2017

    • 著者名/発表者名
      松本宗,佐藤充孝,宮本吾郎,古原忠
    • 学会等名
      日本熱処理技術協会 第84回秋季講演大会

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公開日: 2018-12-17  

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