研究課題
我々は最近、様々なタンパク質中のシステイン残基に翻訳時からイオウ原子が過剰に付加(ポリスルフィド化)していることを示した。タンパク質ポリスルフィドは高いレドックス活性(求核性)を持つことからタンパク質機能制御への関与が予想されるが、その生理機能は不明である。本研究課題では、S-ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)活性およびホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(FDH)活性を有する多機能酵素アルコールデヒドロゲナーゼ5(ADH5)に注目し、タンパク質ポリスルフィド化を介した生体内レドックスシグナル制御機構の解明を目指した。昨年度の研究において、大腸菌および哺乳類細胞で発現したヒトADH5は高度にポリスルフィド化しており、ポリスルフィド化の維持には活性中心のCys174が重要であることを明らかにした。本年度は、組換えタンパク質を用いて、GSNORおよびFDH活性とタンパク質ポリスルフィドの連関について解析を行うとともに、細胞レベルでの解析を行った。ゲルシフトアッセイを用いて、酵素活性前後でのタンパク質ポリスルフィド化レベルの解析を行なった結果、GSNOR反応によりタンパク質ポリスルフィドは減少し、FDH反応により回復することが分かった。興味深いことに、これらのタンパク質ポリスルフィド化レベルの変動とGSNOR活性が相関していることが明らかになった。また、Cys174S変異GSNOR発現細胞を調製し解析した結果、細胞内NO代謝活性が欠損し、タンパク質ポリスルフィド化が顕著に減少していることが分かった。これらのことから、生体内NOシグナル制御系とアルデヒド代謝機構は、ADH5の活性中心のタンパク質ポリスルフィドを介して連関していることが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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