研究課題/領域番号 |
17K17585
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井元 佑介 東北大学, 知の創出センター, 特任助教 (60793982)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数値解析 / 粒子法 / 数値計算手法 / 数値流体力学 / 誤差評価 / 最小二乗法 |
研究実績の概要 |
本研究では,津波のような移動境界問題の数値シミュレーションに広く利用されている粒子法を数学的に捉え直し,流れ問題に対する新たな高精度粒子法の開発とその誤差解析による数学的正当化を推進することである.研究代表者らは,昨年度までに代表的な粒子法であるSPH法やMPS法を含む広い枠組みである一般化粒子法を導入した.さらに,Poisson方程式や熱方程式に一般化粒子法を適用し,その誤差評価を確立した. 本年度は,まず流れ問題に対する粒子法のスキームの再構築を行った.非圧縮性Navier-Stokes方程式にある条件下で厳密に収束するペナルティ問題を用い,空間離散化に一般化粒子法を用いたスキームである.ペナルティ問題の収束条件と,研究代表者らの成果である誤差評価の知見を用いて,本スキームの収束性の十分条件を予想し,その正当性を数値実験により示した.この数値実験によって得られた収束条件では,より良い精度を得るためには計算量を指数的に増やさなければならないという問題があったため,次に,高精度な空間近似を用いた粒子法を含む新たな一般化粒子法の枠組みを構築した.この枠組みでは,離散化パラメーターおよび最小二乗近似に付加する制約条件の選択によって,S-SPMやLS-MPSなどの高精度な粒子法を記述することができる.この一般化粒子法に対して,従来の誤差評価で用いた接続性の条件を用いることで,Poisson方程式に対する一般化粒子法の安定性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子法は,空間の離散化において(i)粒子分布;(ii)粒子ごとの重み(粒子体積);(iii)重み関数の形状;(iv)重み関数のサポート半径を定める必要があり,差分法や有限要素法と比較して離散化パラメーターの種類が多く,実用的な問題に対する各離散化パラメーターの相関的・非相関的な収束性の条件は数値的にも明らかにされていなかった.本年度は,流れ問題に対する粒子法の収束条件を数値的に示したことにより,次年度からは数値的に得られた十分条件を考慮した上で誤差解析を行うことができる.また,Poisson方程式に対する一般化粒子法の安定性評価において,従来の一般化粒子法に用いた接続性条件を用いて評価することができたことから,今後の誤差評価においても従来の成果の知見を用いた評価が期待できる.以上より,本研究課題の研究初年度としての成果は十分に得られていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,数値実験による検証と数値解析の両面から本研究課題を推進する.また,関連する会議などで成果発表も積極的に行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に本センターでの業務が多忙であり,予定していた日本数学会年会の参加を断念したことが理由である.次年度は成果発表や情報収集のための学会参加を増やし,その旅費として繰越分を当てる.
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