研究課題/領域番号 |
17K17588
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
折本 愛 岩手大学, 理工学部, 特任研究員 (30710967)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | fibrillin-1 / ADAMTSL6β / 微細線維形成 |
研究実績の概要 |
私たちの体の中で、歯、皮膚、骨格および血管などの結合組織は、線維性細胞外マトリックスにより機械的強度および弾性力を維持している。微細線維は、fibrillin-1 (FBN-1)を主成分に形成される線維状細胞外マトリックスで、FBN-1に機能不全が生じると体全体の結合組織が脆弱化し、その結果として解離性大動脈瘤や歯周炎を発症するMarfan(MFS)症候群を発症する。このことから、微細線維は結合組織で強度維持に働いている普遍的な機能分子であり、その崩壊機構は、全身の結合組織疾患と歯周炎などの歯科領域での疾患を繋げる共通の標的と考えられ る。このMFSの本質的な原因である組織破壊機構を解明するためには、FBN-1を中心とする微細線維の重合に関わる細胞外マトリックスのネットワークを明らかにする必要性がある。本研究では、FBN-1と結合するタンパク質で微細線維形成を調節している可能性が示されているADAMTSL6β変異体のレトロウイルスベクターを構築し、微細線維を内在性に発現するMG63細胞に感染を行い、ADAMTSL6βのFBN-1結合ドメイン解析とそのドメインの微細線維形成能の解析を行った。ADAMTSL6βは、 N末側から3番目のTSP domainでFib1との結合を示した。そこで、ADAMTSL6βΔTSP2及びΔTSP3 domainの過剰発現細胞を作製し、3番目のTSP domainの微細線維形成に及ぼす作用を免疫染色にて解析したところ、TSP3ドメインの過剰発現細胞では、TSP3ドメインが欠落した過剰発現細胞と比較して、微細線維維形成を促進させることが観察された。 本研究結果より、ADAMTSL6 βのTSP3ドメインは、微細線維形成に重要な役割を果たしている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADAMTSL6βのFBN-1結合ドメイン解析とそのドメインの微細線維形成能の解析により、ADAMTSL6βの3番目のTSP ドメインが微細線維形成に重要な役割を果たしている可能性を示した。その研究成果をまとめた、学術論文が、Cell Biology International に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
ADAMTSL6β変異体のレトロウイルスをこれまで使用してきた細胞とは、異なる細胞に感染したADAMTSL6β定常発現細胞を樹立する。その細胞を用いて、ADAMTSL6 βのTSP3ドメインの微細線維形成に及ぼす作 用を蛍光免疫染色、ウェスタンブロット、qPCRにより検証する。さらに、RNA seq 解析にて微細線維形成に関与する特有の相互作用遺伝子の特定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、前年度までに樹立したADAMTSL6β定常発現細胞を使用し、解析を進めることを予定していた。しかし 、樹立した 細胞はレンチウイルの毒性が影響し、増殖能力を失い、この細胞を用いて解析を行うことが不可能であった。そこで、レトロウイルスベクターを用いることに変更して細胞を再製することを試みたが、レトロウイルスベクタ ーの作成とそのウイルス産生の最適化に想定外に時間を要したため。
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