微細線維は、結合組織形成を制御する細胞外マトリックスで主成分は、fibrillin-1(FBN-1)である。微細線維は、FBN-1がタンデムに結合し、それが束となって構成されている。結合部分は、球状構造物を形成しており、弾性機能を発揮する。また、微細線維は、サイトカインシグナルの調節にも関わり、組織強度の維持に重要な役割を果たす。このFBN-1の遺伝子変異によって、マルファン症候群(MFS)などの結合組織疾患が引き起こされると考えられている。MFSは、FBN-1と結合する細胞外マトリックスのネットワークに異常が生じるため、微細線維形成不全が起こり、体全体の結合組織が脆弱化し、その結果として解離性大動脈瘤、肺気腫、水晶体脱臼および歯周病などの全身に結合組織疾患を発症する。なかでも解離性大動脈瘤は、MFSの症状の中で最も致死性の高い疾患である。MFSの本質的な原因である組織破壊機構を解明するためには、FBN-1を中心とする微細線維の重合に関わる細胞外マトリックスのネットワークを明らかにする必要性がある。 本研究では、FBN-1の重合を促進する細胞外マトリックス因子であるADAMTSL6βとFBN-1結合機構のドメイン解析により、FBN-1微細線維再生に重要なADAMTSL6βのアミノ酸配列を明らかにした。このADAMTSL6βのFBN-1との結合配列をペプチド化する事で、MFSにおける微細線維を再生する新規医療技術として発展する可能性を示した。
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