研究課題
本研究ではデータ同化システムから得られる計測データの感度(重要度)情報を用いて統計的に尤もらしい状態推定を行うための最適計測アルゴリズムを,ドローンによる局所環境流動計測システムに融合して,データ駆動型の非定常環境流動計測システムの研究を行い,実環境における限られた計測の価値を最大化する手法を確立することを最終的な目標としている.本研究では特に最適計測のデータ同化アルゴリズム検討と数値実験に注力している.本年度は可観測性グラム行列による観測位置の評価をより複雑な対象に適用することを目的として,メソスケールの気象場における検討を行った.可観測性グラム行列の固有値の大きな領域で計測を行うことでデータ同化後の流れ場の誤差が減少し,また,固有値の大きさと誤差の減少具合に相関があった.計算領域全体にマップとして表示した計測感度と流れ場の特徴を関連づけることで,流れ場の変動の大きな箇所が可観測性グラム行列の固有値の大きな領域に対応することを確かめた.加えて,逐次型および変分型データ同化手法を低レイノルズ数のカルマン渦流れを用いて比較し,アンサンブルカルマンフィルタにおいてはアンサンブルの性質によって解析インクリメントの分布が決まっており,計測データ量を増やすことで解析インクリメントが流れ場の修正に適した分布となっていく様子を確認した.このことから適切な計測を行うことがデータ同化の精度向上に本質的に重要であると言える.飛行実証に関しては近年のドローン飛行に関する制限から十分に行うことができたとは言えないが,今後は小型ドローンの高性能化および各種センサーの小型化により,比較的容易にドローンを用いたデータ同化システムの検討が可能となってきていると考えらえる.
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