本研究では、松森胤保の蒐集活動に注目し、蒐集記録である『家蔵五玩雑録』の翻刻と分析を行い、そのうち、生物に関する蒐集の多い巻一についてのみ、翻刻資料集を作成した。『家五玩雑録』巻一にあたる江戸時代から明治年までの時期には、動植物や貝がらなど、生物に関する資料を中心に蒐集していたが、明治10年以降、積極的に蒐集活動を行うものの、生物関係資料は少なくなり、採集による個体の蒐集より、剥製や嘴などの部分を店で購入することによる蒐集が多くなっていた。蒐集物の変化は、博物図譜作成に直接つながる行為である。『家蔵五玩雑録』に記録された蒐集物が『両羽博物図譜』作成の基盤となっていることを提示した。
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