研究課題/領域番号 |
17K17604
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
仲井 良太 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (30638987)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱応答 / トポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導体 / 重力場 |
研究実績の概要 |
量子ホール系などのトポロジカル相においてはトポロジーに由来する特徴的な応答現象が現れる。そのような応答現象のうち熱に関する応答現象を背景時空の変形に対する応答として理解するために、本年度は時空に連続的な捻りを加えた時の電子系の振る舞いを経路積分表示を用いた分配関数の計算により調べた。その結果、周期境界を持つ1+1次元系においては時空の捻りを電子系の有効的なエネルギースペクトルの変化として理解できることを示した。またそれに伴ってフェルミ速度も有効的に変化し、古典的な座標変換と一致する。この変換を量子ホール系の端状態のようなカイラルな1次元電子系に適用した場合、分配関数の変化がエントロピーの増減を導くことを示した。これは量子ホール系において期待される熱ホール伝導度の量子化と整合する。さらにヘリカルな1次元電子系に適用した場合には、時空の捻りが1次元のリング上に自発的な熱流を引き起こすことを示した。これはリング上の1次元電子系に磁場を通した時に観測される永久電流の熱応答版であると考えることができる。 上述のトポロジカル相における量子化された熱応答現象の研究に加えて、より広い熱応答現象を取り扱うことのできる手法として、準古典的な解析手法の習得とそれを用いた研究を行った。今年度は特に、空間反転対称性の破れた結晶中の電子系に対してボルツマン方程式を用いて非線形熱流を計算することで、電場や温度勾配などの外場の2次に比例する非相反熱流が現れることを示した。この効果を遷移金属ダイカルコゲナイドなどの電子系において評価し、実験的な検出の可能性について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1次元電子系における重力応答と、空間反転対称性の破れた結晶における非相反熱応答についての研究結果が得られた。また非線形応答を扱う手法として準古典論を用いた研究手法を習得した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた時空の捻りに対する応答をを2+1次元の量子ホール系のバルクの場合に拡張するために、そこで得られるべき効果を量子ホール系の波動関数から計算し、量子ホール系の格子模型において数値的に確かめる。 また、準古典的な手法を用いることで量子ホール系における電子の流体的描像とそこから得られる応答現象について調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度行った研究の範囲は主に解析計算のみで遂行できたため、高速な計算機およびソフトウェアが必要とはならず、当初の計画より使用額が少なかった。 次年度は、計算機の購入、国内学会および国際研究会への旅費として使用する計画である。
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