研究課題
父親の高齢は子どもの自閉症や統合失調症などのリスク因子として報告されている。これまでに申請者らは、高齢マウスの精子において多数の遺伝子座にDNAメチル化の異常が生じることを見出し、これが仔マウスにおける精神疾患様の行動異常や脳の遺伝子発現異常と関連することを見出した。そこで本研究では、雄の加齢に伴い精子DNAメチル化異常が生じる分子機構について明らかにすることを目的とした。精子DNAメチル化異常の生じた領域には転写抑制因子NRSF/RESTの結合モチーフが濃縮していたことより、精子形成過程におけるNRSF/RESTの関与が示唆された。そこで精巣におけるNRSF/RESTの発現を確認し、若齢および高齢雄の精巣全体における発現レベルの定量を行ったが、mRNAおよびタンパク質の発現量に有意な変化は認められなかった。次に、精子形成過程の特定の分化段階に着目してNRSF/RESTの発現量を比較するために、免疫組織染色による解析を試みた。市販されている複数の抗NRSF/REST抗体を用いて特異性の確認を行ったが、十分な特異性が確認されず、免疫組織染色による解析には適さないことが明らかとなった。アルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性疾患は加齢により発症が増加するが、その原因の一つとして、加齢に伴うNRSF/RESTの細胞内局在変化が挙げられている。そこでNRSF/RESTの細胞内局在を制御することが報告されているHttに着目して発現量を比較したところ、高齢雄の精巣全体において発現量が増加していることが明らかとなった。したがって、精巣においても加齢に伴いNRSF/RESTの局在変化が生じる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
抗体の特異性が確保出来ず、NRSF/RESTの局在解析が遅れているため。
抗体の特異性の問題を解決するために、学外の研究者と協力してNRSF/REST自体にエピトープタグを付与したノックインマウスを現在作成中である。また、精巣の各種細胞を分画分取して分化段階ごとの解析を行う。
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