好中球は、活性化に伴いネット状のDNAを放出する。これは細胞死の結果であるが、核の凝集やDNAの断片化がおこらず、核膜と細胞膜の崩壊を伴うという特徴を有することから、アポトーシスやネクローシスと区別してExtracellular trap cell death (ETosis)と呼ばれる。この細胞死は重要な自然免疫機構である一方、適切にETosisをコントロールすることは炎症疾患の治療戦略になっていくと考えられる。歯周炎は中高年層の70%以上が罹患している口腔常在菌による慢性炎症疾患であり、脳血管障害や糖尿病をはじめ様々な疾患との関連から、その制御が重要視される。また、近年では、ビスフォスフォネート製剤や抗RANKL抗体製剤などの骨修飾薬や分子標的薬による顎骨壊死の報告が多数散見する。本研究では、歯周炎をはじめとした歯性感染症の病態形成における好中球のETosis (Neutrophil ETosis) の関与を明らかにし、新しい治療戦略の提唱を目指すことである。 臨床サンプルを用いて、炎症局所におけるNETsの局在と性状を評価、ヒト末梢血分離好中球を用いて、好中球のETosisの誘導因子、メカニズムの解明と分離好中球から誘導させたNETsによる各種培養細胞への影響について検討。歯周炎や顎骨骨髄炎等の歯性感染症患者の臨床検体を用いた検討を行っているが、サンプルの保存や処理条件の設定、実験プロトコールはある程度確立した。 グラム陰性菌の構成成分LPSやIL-1、IL-8、TNF-αなどの炎症性サイトカインとNETosisとの関係を検討。ETosisを誘導させた好中球を用いて破骨細胞や骨芽細胞、線維芽細胞などの培養細胞との共培養を行い、ETosisによって産生される液性因子、遊離顆粒やDNAなどによる影響について、ELISA法により測定し、現在解析中である。
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