1論文発表1)間質の癌組織で、間質細胞は癌細胞により刺激され、癌浸潤や増殖の促進に働いてしまう。申請者は間質のCAF(癌関連線維芽細胞)が約25%の癌細胞の細胞死を引き起こし、癌アポトーシス小胞の産生を促すことを見つけた。この小胞は癌-CAFの連携した癌浸潤の促進に働くことをOncogene誌(2017)で報告した。浸潤システムはマウス癌モデルで確認され、ヒト癌での発生が想定される。 論文発表2)癌細胞での異常な染色体分配は細胞の染色体数や種類を変化させる。この変化は癌細胞の抗がん剤耐性などの多様性を生み出す。Chromosomes rosetteは分裂期初期の特徴的な染色体配向であるが、申請者はこの正しい配向が最終的に適切な染色体分配に結びつくことをScientific Report誌(2018)にて報告した。Chromosomes rosetteはヒト胃がん組織でも観察され、この配向が異常となった場合、癌悪性化を招く可能性がある。 成果1) 間質のCAFとマクロファージは癌細胞の周辺に多く分布する。そこで、これら3者の関連を調べた。マクロファージのモデルとしてRAW264.7マウス細胞を使用した。CAFに刺激されたRAW細胞は44As3スキルス胃癌細胞の細胞死を誘導することを見つけた。一方で、細胞死を回避できるSASヒト扁平上皮癌細胞ではCAF-RAWリード型の癌浸潤を促進させた。 成果2) MMP阻害剤GM6001や微小管重合阻害剤Nocodazoleの添加はCAFの浸潤を抑制し、癌浸潤の形態に変化を与えることを見つけた。CAF浸潤にとって、MMP-1とMMP-14の同時抑制が有効であった。CAFと44As3胃癌細胞をゲル上にて共培養した結果、CAFのMMP-1 / -14を阻害した場合ではCAFリード型癌浸潤から圧排性増殖様の癌浸潤様式への転換が認められた。
|