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2019 年度 実施状況報告書

細胞外イオン濃度変化を介したニューロン-グリア相互作用の解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K17615
研究機関山形大学

研究代表者

後藤 純一  山形大学, 医学部, 助教 (70435650)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードニューロン / シナプス可塑性 / ニューロングリア相互作用 / グリア
研究実績の概要

前年度に引き続き、(1)細胞外カリウムイオン濃度の計測手法の改良と(2)細胞外イオン濃度の変化が海馬スライスに与える影響について、それぞれ検討した。
(1)細胞外カリウムイオン濃度の計測では主に不十分なシグナル/ノイズ比に起因する精度の不足が問題となっており、ノイズ低減のための実験装置の改良と評価の為の測定を実施した。ノイズ低減に関しては、アンプの入力抵抗が十分でない可能性があり、これに関しては現時点では完全な解決が難しいと判断し、事後的な解析によって精度を向上させるための検討を実施した。また、ガラス電極の経時的な安定性を改善するため、銀-塩化銀電極の塩素化処理の方法を複数検討し、電源(乾電池)を用いた電気分解を第一選択にすることとした。
(2)細胞外イオン濃度を人為的に変化させることでニューロンの機能、特にシナプス可塑性に与える影響について引き続き検討をおこなった。可塑性誘導刺激の入力中、入力前、入力後などに細胞外カリウムイオン濃度を変える実験でLTP誘導に影響を与える可能性が示唆された。刺激パターンによっては明確な差異が見られない条件もあったため、入力刺激の周波数や発数などを変えることで、細胞外カリウムイオンが影響を及ぼす閾値を検討した。刺激パターンとして主に100Hzの高頻度刺激とθバースト刺激を用いて条件検討を実施した。高頻度刺激、θバースト刺激ともに細胞外カリウムイオン濃度の一過性の上昇がLTP誘導に促進的に作用する可能性が示唆された。現状ではサンプルサイズが小さいため、一部の条件についてより多い例数の実験を開始している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

二重構造のガラス電極を用いた細胞外イオン濃度計測において計測の安定性とシグナル/ノイズ比の改善に当初の想定よりも時間を要している。考えられうる原因の一つとしてアンプの入力抵抗の不足していることが考えられ、その場合の解決策はアンプそのものを交換を必要とするために現時点では実現していない。アンプ以外の部分に関して更なるノイズ低減の対策を施すとともに、複数の計測データから実験後の解析により推定を行うための準備を始めている。従来の解析用ソフトウェアを用いた手動の解析だけでは大量のデータに対する反復処理などに困難があるため、大規模データ解析に適した対話型プログラミング言語であるPythonを用いて、簡単な解析プログラムを作成する方法を試行中である。
パッチクランプ用実験装置の改修作業は電気刺激装置を含めた機器の交換を行ったが、現時点では解析が可能な品質でのデータ計測には至っておらず、装置由来のノイズ除去等を行っている。

今後の研究の推進方策

前年度に引き続き、細胞外カリウムイオン濃度の一時的な変化がシナプス可塑性誘導に与える影響について解析を進める。LTP誘導と脱増強(depotentiation)のそれぞれの可塑性誘導について細胞外カリウムイオン濃度の一過性上昇による影響についてのデータをさらに追加し、統計学的な解析を行う。また、可塑性誘導に影響が見られる条件下において、興奮性シナプス後電位と活動電位の関係性や、ニューロンの内因的興奮性(intrinsic excitability)に何らかの影響があるかを調べることで、カリウムイオン濃度の一過性変化が長期的に及ぼす影響について検討する。
イオン選択制電極の測定値の安定性の問題はアンプを別の実験装置のものを流用することで解決が可能かどうか検討を行う。使用する機材によっては現在用いている制御用入出力機器と制御ソフトウェアの組み合わせが使用できないため、制御ソフトウェアを部分的に自作することを検討する。
また、シナプス可塑性や電気生理学的特性等のニューロンの機能にグリア細胞がどの程度影響を与えているかを調べるために、アストロサイトの役割について調べる。上述のイオン濃度条件下において、(1)アストロサイトによる細胞外カリウムイオンの回収機構を阻害する、(2)アストロサイトにパッチクランプ法を適用し膜電位計測をおこなうとともに、各種の阻害薬の効果を調べる。

次年度使用額が生じた理由

前年度末に生じた電気刺激装置の故障の為、今年度において電気刺激装置の修理ないしは代替装置の入手を行う予定であったが、メーカーよる修理不能、および代替装置が高額であったことと、別の実験装置から流用できる機器が発生したために応急的にその機器で対処をおこなった。一方でアンプに関しては入力抵抗が十分ではない可能性があり、こちらに予算を使用する予定であるが、今年度内に安価な機器を入手できなかったため、次年度に改めて購入するために予算の繰り越しを行った。

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公開日: 2021-01-27  

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