研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,漢字部首の空間配置に関してパターン認知理論の観点から「評価パターン」を作成して,児童の漢字書字エラーを分析し,認知モデルを提唱することである。 2018年度は,前年度に作成された評価パターンに関して,成人を対象とした評定実験を行うことで,物理情報(物理的に定義できる基準)および感性情報(物理的には定義できない基準)の観点から評価パターンとしての妥当性を検証した。評定実験では,成人(40名)が評価パターンそれぞれについて,空間配置の「複雑さ」を評定した。結果から,評価パターンは「同等集合サイズ(Garner, 1962)」,「パターン内変換構造説(松田, 1978)」,物体数の影響(Takahashi et al., 2012)を用いることで,物理情報の観点から説明できることがわかった。つまり,前年度に作成した評価パターンは,これらのパターン認知理論によって理論的に支えられており,以後の漢字書字エラーの分析において,評価パターンとして用いることの妥当性が高いものと考えられる。「複雑さ」などの感性情報に関しても,これらのパターン認知理論との関連がわかったため,物理情報と感性情報における漢字書字エラーの分析においては,これらを評価パターンとして用いることの妥当性の高さが確認された。 2019年度は,これらの評価パターンを用いて,児童の漢字書字エラーの分析を行う予定である。既に,予備的にではあるが,漢字書字エラーの分析を始めている。評価パターンにもとづいた漢字書字エラーの特徴が解明されることで,空間配置の観点から,新たな認知モデルを提案できる。
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