研究課題/領域番号 |
17K17620
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
叶 少瑜 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (00762204)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | メディア心理学 / 異文化コミュニケーション / 異文化適応 / 安心・信頼 / 共生 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は留学生の外集団に対する信頼感と内集団(留学生同士,特に文化背景が同じ人たち)に対する安心感がいかにソーシャル・サポート・ネットワーク(SSNs)の形成,及び異文化適応の3者間がどのような関係にあるのかを解明することである。そのため,2018年度は変数間の因果関係を推定できる縦断調査(パネル調査)法を用いて,6月中旬~7月下旬を1時点目,2019年1月中旬~2月下旬を2時点目として,複数の国立大学に在籍する留学生を対象に調査を実施し,検討を進めてきた。 また,SSNsの構成(日本人・同国人・他国人),そこから得られるサポートの種類,そのネットワークのメンバーとの関係などについて,対面とLINEやWeChatなどのようなメッセンジャー使用によって異なるかどうかも検討した。 その結果,1時点目には213名が回答し,そのうち欠損値のあるものなどを除いて209名が分析対象となった。2時点目には132名が回答し,1時点目と合わせて最終的に分析対象になるのは128名であった。分析した結果,以下のことを明らかにした。 (1)外集団に対する信頼感の高い人は対面でもメッセンジャーを用いても日本人とSSNsを形成することができた。 (2)LINEやWeChatなどのメッセンジャーを介したSSNsには多くの同国人を含むが,その次に日本人,他国人という順で存在することが分かった。 (3)対面によるSSNsからもメッセンジャーによるSSNsからも情報的サポートと情緒的サポートが得られたが,いずれも日本人からのソーシャル・サポートのみストレス感を軽減することができた(同国人と他国人からのサポートには同様の効果が見られなかった)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は予定通り,パネル調査の1時点目・2時点目を実施することができた。また,その一部の成果を2019年7月11-13日台湾で開催されるアジア社会心理学会にて発表し,成果を公表することができた。それとともに,最も重要な研究成果は査読付き論文として執筆し,現在投稿に向けて準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は対面とともに,留学生が頻用するソーシャルメディアの種類,それぞれ形成された社会的ネットワーク,得られるソーシャルサポート,及び異文化適応の関係について検討してきた。2019年度は安心と信頼の観点から,留学生の情報行動が母国に対する愛着(集団同一性)と日本への適応(文化的適応と学業的適応の両方)といかに関係するか検討する。 また,これまでの調査と同様に,2019年度の調査も日本語版とともに,英語版,中国語版(簡体字・繁体字)と韓国語による調査票を用意し,参加者らが自らの意思で自由に選択できるようにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に海外出張をしたため,精算による差額が生じた。これは来年度の旅費として使用する予定である。
|