本研究では在日留学生を対象に,内集団に対する集団同一視と外集団に対する一般的信頼感が彼らの異文化適応にいかに関係するのか。また,留学の動機付けとソーシャルサポートネットワーク(SSNs)の形成が異文化適応に与える影響を含めて,中国本土出身の留学生とその他の留学生によっていかに異なるのかを究明することを目的とした。2021年11月中旬~12月上旬に留学生を対象に横断調査を行い,調査した時点までに3か月以上日本に滞在していた364名を分析対象とした。中国本土出身の留学生160名とその他の国・地域出身の留学生204名を比較した結果,以下のことを明らかにした。 ①中国本土の留学生は日本語能力が高く,半数ほどは日常的にアルバイトをしており,奨学金を受給するのは4割未満であった。一方,その他の留学生の8割近くは奨学金を受給しており,7割ほどはアルバイトをしていなかった。 ②中国本土の留学生の第一外国語は日本語である人が多く,日本語で授業を履修し,卒業論文等を日本語で執筆すると回答したのは8割ほどあった。その他の留学生の8割近くは英語で授業を履修し,卒業論文等を英語で執筆すると回答した。 ③その他の留学生に比べて,中国本土の留学生の集団同一視は高かったが,留学の動機付けと学業的適応はいずれも低かった。また,中国本土の留学生のSSNsには7割以上が同国人であり,同国人からのサポートが最も多かった。一方,その他の留学生のSSNsの半数ほどは日本人・他国人であり,日本人や他国人からのサポートも多かった。 ④中国本土の留学生は母語によるメディアへの接触頻度が高く,母国のメディアに対する信頼感が高かったのに対して,その他の留学生は母語以外の言語によるメディア使用の頻度が高く,それらに対する信頼感も高かった。また,日本の公的機関やマスメディアに対する信頼感もその他の留学生の方が高かった。
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