平成30年度はビニールハウスにて水耕栽培したマスクメロンについて、菌叢解析とRNA-seq解析のためのサンプリングを行い、植物側トランスクリプトームと植物体付着菌叢情報を同時解析するためのバイオインフォマティクス解析手法を検討した。まず手法検討のためのサンプリングとして、直径1cm程度のうどんこ罹病部位を持つ葉を対象にして、罹病部位と無害部位(コントロール)を春季と秋季のそれぞれにおいてリーフディスクとしてサンプリングした。同一サンプルからDNAとRNAを同時精製する分子生物学実験手法を考案し、前者についてはrDNA領域を対象にしたバクテリア、真菌類の菌叢解析を実施した。後者についてはショートリード型次世代シークエンサーによるRNA-seqを行った。真菌類については菌叢解析によって42種のtaxonomic groupが検出され、秋季サンプリング由来のデータでは既知のうどんこ菌の存在が示唆された。RNA-seq情報については、はじめにメロンのゲノムリファレンスに発現配列情報をアライメントして植物体側トランスクリプトーム情報を取得した後、非マップリード情報(非メロン由来の情報)をさらに分離して、これをパブリック・データベースから取得した菌類のメタゲノム情報に再アライメントすることでtaxonomic groupをカウントした。秋季データについては菌叢解析とRNA-seqで結果が類似しており、本手法によりRNA-seqからうどんこ菌存在率と植物体側トランスクリプトーム情報を同時解析できることが示唆された。春季データでは、rDNA菌叢解析ではうどんこ菌の存在は強く示唆されなかったものの、RNA-seqに基づく解析ではこれを示唆する情報が得られた。本研究で構築した情報解析パイプラインはスクリプトで自動処理することができ、その他の検体についても同様の解析を行った。
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