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2018 年度 実施状況報告書

材料強度発現のメカニズム解明のための金属組織を考慮したマルチスケールき裂進展解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K17627
研究機関筑波大学

研究代表者

新宅 勇一  筑波大学, システム情報系, 助教 (80780064)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード破壊力学 / 計算力学 / 結晶塑性 / 異方性損傷モデル
研究実績の概要

本年度は、本研究の最終目的である金属の結晶組織の不均一性に起因する材料強度発現のメカニズムを解明するために、ミクロ構造を考慮可能なマルチスケールき裂進展解析手法のプロトタイプを開発した。まずマクロスケール解析として小規模降伏状態を仮定した試験片の弾性解析を実施し、き裂先端周辺のマクロ変位場を求めた。次に、得られたマクロ変位場をき裂先端の局所領域内の多結晶体を想定した有限要素モデルに付加し、ミクロスケール解析として結晶粒の異方性や結晶粒界の局所的な応力集中部を考慮したき裂の進展解析を実施した。最後に、ミクロスケールにおける不均一性によって減速と加速を繰り返すき裂の進展速度を平均化することで、マクロスケールにおけるき裂進展速度として算出した。
開発した手法の検証のために水素脆化によるき裂進展の問題に適用し、応力拡大係数とき裂進展速度の関係が実験結果と定性的に一致することを確認した。ここで、応力拡大係数とはき裂先端における応力場(もしくは、変位場)の勾配の大きさを表す破壊力学パラメータである。また、結晶すべりが開始される応力値を表す初期すべり抵抗の違いによって、応力拡大係数とき裂進展速度の関係が変化することを確認した。具体的には、降伏応力が小さい材料ではき裂が安定的に成長する段階においては、結晶すべりによってき裂の進展速度が遅くなり、ほぼ一定値となった。これに対して、降伏応力が大きい材料ではき裂の進展速度は応力拡大係数の増加に伴って大きくなった。このことから、本研究の目的である結晶組織の不均一性を反映したき裂進展速度をマクロスケールの値と得られることが可能になったと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前述のように、本研究の目的である結晶組織の不均一性を反映したき裂進展速度をマクロスケールの値と得られることが可能になったため、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

今年度実施した数値解析例においては多結晶体の一部の粒界のみにき裂が進展することを仮定しているため、今後は任意の位置におけるき裂の発生と任意方向へのき裂の進展を再現できるように開発した手法に改良を加える。具体的には、昨年度開発した「金属材料のミクロ・スケールにおける結晶格子の異方性弾性変形・結晶すべりによる異方性塑性変形・へき開面の破壊を表現した微視的メカニズムに基づく材料構成則」をミクロスケールにおける解析に導入する予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [学会発表] 温度依存性を考慮した結合力モデルおよび Gurson モデルによる延性・脆性破壊シミュレーション2018

    • 著者名/発表者名
      鍵村拓也, 新宅勇一
    • 学会等名
      日本機械学会第31回計算力学講演会
  • [学会発表] 移動硬化を考慮した結合力埋込型弾塑性損傷モデルによる構造用鋼材の耐久性評価2018

    • 著者名/発表者名
      副島克哉, 新宅勇一, 堤成一郎, 寺田賢二郎
    • 学会等名
      日本機械学会第31回計算力学講演会
  • [学会発表] 繰り返し応力に伴う弾塑性挙動と疲労き裂発生寿命評価2018

    • 著者名/発表者名
      新宅勇一, 寺田賢二郎, 堤成一郎
    • 学会等名
      大阪大学接合科学研究所 平成30年度 共同研究成果発表会
    • 招待講演
  • [学会発表] 水素の非定常拡散を考慮した水素助長疲労き裂の進展解析2018

    • 著者名/発表者名
      石橋奏, 新宅勇一, 寺田賢二郎, 堤成一郎
    • 学会等名
      平成30年度 秋季全国大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Fatigue Crack Growth Simulation Considering Crack Closure Effect2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Shinozaki, A. Takahashi, Y. Shintaku, M. Kikuchi
    • 学会等名
      The 11th International Conference on Fracture and Strength of Solid
    • 国際学会
  • [学会発表] Gursonモデルによる延性き裂進展解析のための非線形計画法の検討2018

    • 著者名/発表者名
      鍵村拓也, 新宅勇一
    • 学会等名
      第26回茨城講演会
  • [学会発表] A method for seamless transition from degradation of material stiffness to formation of strong discontinuity2018

    • 著者名/発表者名
      Y. Shintaku, S. Tsutsumi and K. Terada
    • 学会等名
      13th World Congress on Computational Mechanics
    • 国際学会
  • [学会発表] 多結晶体金属における水素拡散と水素脆化によるき裂進展の双方向弱連成解析2018

    • 著者名/発表者名
      石橋奏, 新宅勇一
    • 学会等名
      第23回計算工学講演会
  • [学会発表] 複合硬化弾塑性モデルを用いた構造用鋼材の損傷評価と載荷パターン・応力三軸度が及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      副島克哉, 新宅勇一, 堤成一郎, 寺田賢二郎
    • 学会等名
      第23回計算工学講演会
  • [学会発表] き裂開閉口挙動を考慮した疲労き裂進展解析システムの構築2018

    • 著者名/発表者名
      篠崎勇人, 高橋昭如, 新宅勇一
    • 学会等名
      第23回計算工学講演会
  • [学会発表] Paris則に基づく結合力モデルを用いた2次元疲労き裂進展解析システムの構築2018

    • 著者名/発表者名
      藤原宇希, 高橋昭如, 新宅勇一
    • 学会等名
      第23回計算工学講演会
  • [学会発表] 計算材料力学によるマルチフィジックスき裂解析手法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      新宅勇一
    • 学会等名
      第13回産学連携シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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