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2020 年度 実施状況報告書

材料強度発現のメカニズム解明のための金属組織を考慮したマルチスケールき裂進展解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K17627
研究機関筑波大学

研究代表者

新宅 勇一  筑波大学, システム情報系, 助教 (80780064)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード破壊力学 / 計算力学 / 結晶塑性 / 異方性損傷モデル / 脆性破壊 / き裂進展 / マルチスケール / 有限要素法
研究実績の概要

これまでに、Augmented Lagrangian method(ALM)を用いることで、非周期的な構造に対しても周期境界を付加できるプログラムを開発してきた。しかし、根本的に非周期的な構造に対して周期境界を強制的に付与すると、境界面において不自然な応力集中が生じていた。これにより、境界上から破壊が生じ、結果としてALMが不安定的に動作しなくなる問題が生じていた。
そこで、均質化法の理論を一から見直した結果、ミクロとマクロの2つの空間スケールにおいてエネルギー保存をALMで満足させることで、非周期性を許容するマルチスケール解析手法の開発に成功した。これにより、周期性を無理やり境界に課した場合に発生していた不自然な応力集中が発生することなく、ミクロスケールの解析からマクロスケールにおける状態量を求めることが可能となった。さらに、不自然な応力集中がなくなったことで、数値解析自体も安定的に動作し、非線形ソルバーの反復回数も削減されたため、結果として計算時間も短縮された。
具体的な計算例として、フェライトとセメンタイトのラメラ構造を有するパーライト結晶粒の材料特性を中間的な空間スケールの値として求めた。さらに、パーライトとフェライトの結晶粒からなる多結晶体の有限要素モデルに対して、本開発手法を用いることで巨視的な材料強度の予測を実施した。加えて、結晶構造や結晶方位を変えた有限要素モデルに対して、同様の解析を複数回行うことで巨視的な強度のバラつきを評価可能となった。現在は、開発した手法の理論を整理し、国際学会での発表、および国際論文への投稿を準備している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

昨年度の時点で、当初の研究計画は概ね達成できていたが、均質化法の理論を一から見直したことで、非周期境界を許容するマルチスケール解析手法の開発に成功した。この成果は当初の研究計画では予想していなかったものであり、固体材料分野だけでなく、流体などの幅広い力学分野の発展に寄与できると考えている。一方、CONVID-19の影響によって国際学会へ参加ができないなどの研究成果報告に関しては遅延が見られる。しかしながら、全体的に見れば、当初の計画以上に研究を推し進めることができたと言える。

今後の研究の推進方策

今後は、開発した手法の理論を整理し、国際学会での発表と国際論文への投稿を行いたいと考えている。加えて、今年度開発したマルチスケール解析に確率的手法を組み合わせるなど、より研究を発展させたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

当初参加を予定していた国際学会がCONVID-19のために延期となり、日程が合わなくなったため。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] An Elastic-plastic Constitutive Law Embedding Cohesive Cracks with Plasticity-induced Damage to Realize Degradation of Strength and Toughness under Cyclic Loading2020

    • 著者名/発表者名
      Shintaku Yuichi、Soejima Katsuya、Tsutsumi Seiichiro、Terada Kenjiro
    • 雑誌名

      Tetsu-to-Hagane

      巻: 106 ページ: 662~671

    • DOI

      10.2355/tetsutohagane.TETSU-2019-121

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A Gurson Model Improved by Cohesive Traction-Separation Law to Realize Transition from Ductile to Brittle Fracture2020

    • 著者名/発表者名
      KAGIMURA Takuya、SHINTAKU Yuichi、TSUTSUMI Seiichiro、TERADA Kenjiro
    • 雑誌名

      QUARTERLY JOURNAL OF THE JAPAN WELDING SOCIETY

      巻: 38 ページ: 126s~130s

    • DOI

      10.2207/qjjws.38.126s

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Memory surfaceによる硬化の影響を考慮した材料モデルに対する主双対内点法の適用2020

    • 著者名/発表者名
      中村文俊、新宅勇一
    • 学会等名
      第25回計算工学講演会
  • [学会発表] 数値材料試験を用いたへき開破壊に起因する材料強度のばらつき評価2020

    • 著者名/発表者名
      今井大貴、新宅勇一
    • 学会等名
      第25回計算工学講演会
  • [学会発表] き裂進展解析に対する損傷の非局所性の影響に関する数値解析的 検討2020

    • 著者名/発表者名
      金澤凌平、新宅勇一
    • 学会等名
      日本機械学会 2020年茨城講演会
  • [学会発表] フェライト-パーライト鋼における結晶すべりおよびへき開破 壊を考慮した数値材料試験2020

    • 著者名/発表者名
      今井大貴、新宅勇一
    • 学会等名
      日本機械学会 2020年茨城講演会
  • [学会発表] Memory surface を考慮した弾塑性モデルによる地震時の鋼橋の数 値解析2020

    • 著者名/発表者名
      中村文俊、新宅勇一
    • 学会等名
      日本機械学会 2020年茨城講演会
  • [学会発表] 主双対内点法を用いた非線形材料モデルのパラメータ同定2020

    • 著者名/発表者名
      神田寛明、新宅勇一
    • 学会等名
      日本機械学会 2020年茨城講演会
  • [学会発表] Assessment of residual strength and toughness of steel bridge by a cohesive-force embedding constitutive law combined with plasticity-induced damage and memory surface2020

    • 著者名/発表者名
      F. Nakamura, Y. Shintaku, S. Tsutsumi and K. Terada
    • 学会等名
      COMPSAFE2020
  • [学会発表] Multiscale prediction of macroscopic material strength dispersion on ferrite - pearlite steel by numerical material testing2020

    • 著者名/発表者名
      D. Imai, Y. Shintaku, K. Terada
    • 学会等名
      COMPSAFE2020

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公開日: 2021-12-27  

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