研究課題
昨年度までに開発したGAD67ノックアウトラットの統合失調症モデル動物としての妥当性や特徴を調べている。既報のGAD67ノックアウトラット(Fujihara et al., 2020)はホモノックアウトラットであり、GAD67分子が完全に欠損している。しかし、統合失調症の死後脳所見では、GAD67はあくまでも減少しているのみであり、完全に消失しているわけではない。そこで、よりGAD67分子の減少がマイルドなGAD67ヘテロノックアウトラットの行動学的表現型についても解析を行い、どのような異常を示すかを確認することとした。GAD67ヘテロノックアウトラットに対してNMDA受容体遮断薬を幼若期連続投与すると、成獣におけるオープンフィールド試験において不安様行動が減じると共に、より乱雑な探索行動を示すようになった。幼若期のNMDA受容体遮断を行わないGAD67ヘテロノックアウトラットでは、このような変化を示さなかった。GAD67ノックアウトラットではオープンフィールド試験で低活動を示し、不安様行動がむしろ亢進するため、表現型は大きく異なっていた。同じく幼若期NMDA受容体遮断を行ったGAD67ヘテロノックアウトラットでは、音響刺激への馴化が乏しいなどの変化も認められた。こうした所見を総合すると、GAD67ヘテロノックアウトラット自体は大きな行動学的変化を示さないが、他のリスク因子と相互作用することによってより大きな表現型(しかもGAD67ホモノックアウトラットとは異なる表現型)を示すことが明らかとなった。GAD67ヘテロノックアウトラットについてもミクログリアの形態学的な異常を解析しているが、少なくともNMDA受容体遮断薬未投与個体においては、目立った形態学的変化がないことを確認している。
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