認知症は、日常生活に困難が生じる病気である。手段的日常生活動作能力(以下、IADL)は、軽度認知障害(以下、MCI)や軽度アルツハイマー型認知症(以下、軽度AD)の段階から徐々に低下することから、地域在住高齢者のうち、日常生活に些細な困難を抱え始める者は少なくないと推察されるが、どのような困難を抱えながら自らの力で生活を営んでいるのか、詳細には明らかになっていない。 本研究は、IADLのうち服薬管理に焦点を当てる。地域在住高齢者の服薬管理における困難と、その困難に対する工夫を明らかにすることを目的とした。 2017年度の調査では、地域在住高齢者を対象に、服薬状況と服薬管理における困難、服薬指示の理解状況、認知機能を問う質問紙調査を行った。232名の対象が、服薬管理場面で困難を覚えるのは「決められた時間に薬を飲む」「もらった薬を余らせない」であった。服薬指示の理解状況と認知機能テストには中程度の相関が認められた(p<.001)。 2019年度の調査では、地域在住高齢者を対象に、服薬管理場面で困難を覚えやすい「決められた時間に薬を飲む」「もらった薬を余らせない」場面に対する工夫を問う訪問調査を行った。55名の対象者は、全員日常生活に根ざした工夫を行っていた。服薬管理支援を行う場合、対象者の日常生活を把握した上で、支援の方向性を検討する重要性が示唆された。 この研究成果を学会で示説発表にて発表する予定である。現在専門学会誌への投稿に向けた準備を行っている。
|