術後放射線治療を行った口腔癌のホルマリン固定パラフィン包埋検体を用いて治療成績と関連する遺伝子の解析を試みた。患者情報については診療記録を遡及的に解析し、患者背景、疾病についての情報、手術記録、放射線治療記録、治療成績等を収集した。 DNA抽出にあたり、口腔癌の中でも発生母地によって抽出が可能な量に差があり、特に歯肉由来の検体では舌、頬粘膜と比較し、十分量のDNAを回収することが困難であることが判明した。 治療成績から放射線治療抵抗性が高いと考えられた検体を選び、また放射線治療反応性が良好であった検体のうち特に十分量のDNAが抽出できた検体を選択し、次世代シークエンサーを用いてがん関連遺伝子のホットスポットについて変異の解析を行った。なおシークエンスにあたり、検体の品質を評価したところ全般的にDNAの変性、分解が進んでいることが判明し、特に一部の検体では評価困難な可能性も示唆されたが、シークエンス自体は可能であった。 シークエンスの結果、まず検体ごとで変異総数の差異が大きく、検体によって検出された変異数が数10から数100程度と開きがあり、また特にホットスポットに関わる変異においてでも変異が数個程度である検体から数10個の変異を有するものまで認められた。 各検体に共通する変異、検体により特有の変異も見出されたが、臨床情報との有意な関連づけは困難であった。 今後はさらに検体を増やしてシークエンスを行うとともに、検体の質を担保できるよう前向きに検体の凍結保管およびDNAの早期抽出が必要と考えられた。
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