研究課題/領域番号 |
17K17636
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
神田 真人 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (50444055)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心筋再生 / 細胞移植療法 / 心筋梗塞 / 褐色脂肪組織 |
研究実績の概要 |
本研究は心筋特異的多蛍光発色マウスマウスモデル(Rainbow-Cre マウス)を用いて、MI後に褐色脂肪組織(BAT)細胞の移植療法等を行い、それらによる心筋細胞分裂促進作用を調べる。さらに、再生出現部位を特異的に採取・解析することで新規心筋再生促進因子を同定し、あらたな再生医療につなげることを目的とする。 平成29年度にはRainbow-Creマウス(Rb/Cre遺伝子)のRb/Rbホモ体を抽出できるようにし、2つの Rb遺伝子でTamoxifen投与後ランダムに3色発色する傾向の組み合わせにより、隣接細胞同士が6色の異なる発色を示すマウスモデルを確立した。蛍光発色を分離するための共焦点顕微鏡の設定を工夫し、最初に内因性の発色を観察した後、同切片で細胞増殖マーカー等の免疫染色を行い、比較する系を確立した。これにより増殖マーカーによる免疫染色では難しかった、cytokinesisまで完遂した完全な増殖を探知できるようになった。心筋梗塞(MI)群とsham群をMIから6週間後に比較することにより、MI群では再生頻度がshamに比べて増加しており、MIにより残存心筋由来の心筋再生が促進されることがわかった。さらに心筋再生の部位は、特にMI周辺領域に多いことが示され、部位による違いを示すことができた。 また移植療法のために、褐色脂肪粗機(BAT)細胞を、マウスの背部、および腋窩部より採取、増殖因子の入ったメソカルト等とともに10-14日培養し、その後いったん分離し、PuraMatrixとあわせて3次元培養を行った。最適化した移植片をMI2-4週間後の慢性期モデルに投与するまでの過程を確立した。今後、この手法を上記Raibow-Creマウスに適応し、慢性期での再生頻度および部位について検討をしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rainbow-CreマウスRb/Rbのホモ体を安定的に産出させ、Tamoxifen投与後ランダムに6色の蛍光発色を観察するモデルを確立した。また、BAT細胞の採取・3次元培養の手技も確立し、安定的に施行可能となった。さらに一度MI手術を施行した後、2-4週間後に再度移植手技も、合併症なく行えるようになった。今後MIおよび慢性期の移植治療の手技をRainbow-Creマウスに施行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記モデルが確立したため、慢性期の移植治療による心筋再生の促進効果およびそのメカニズムについて検討していく。 MIを作成したモデルマウスを2-4週間後に再度胸腔を解放して、心筋梗塞ができていることを確認後、上記のBAT+ PuraMatrixT M移植群とVehicle単独移植群にわけ、処置を行う。4-8週間後に心機能を心エコーで評価の後、サクリファイスする。心筋傷害の程度を組織学的にも評価した後、再生頻度について評価する。なお、preliminaryな結果では、移植後4-8週後も細胞が残存することを確認しており、今までの報告と比べても細胞生着期間が長いことから、その効果が期待される。BAT細胞に分裂・増殖促進作用があることがわかったら、モデルマウスに於いて分裂・増殖部位を特異的に採取する。 まず、慢性期心不全モデルにおいてBrdU・Ki67・AuroraBなどの従来のマーカーを用いて、最も分裂が進んでいる時期を同定する。次に同定した分裂期において、発現因子している因子を比較し、心筋分裂誘導候補因子を選別する。候補因子の中からin silico、およびqRT-PCRによる絞り込みを行う。絞り込んだ因子を成体マウスから採取した培養心筋細胞に投与し、増殖促進効果について細胞増殖マーカー等により検証し、もっとも効果のあるものを同定する。 さらに同定された新規因子については、in vivoでの分裂誘導効果を評価する。促進因子の増産のために、cDNAの形でプラスミドに導入したあと、大腸菌を用いて増殖・精製を行い、マウスにプラスミドの形でトランスフェクションする、もしくはベクターウイルス等を用いて導入する。M後慢性心不全期に心機能改善効果をみると同時に、心筋分裂促進作用をこれまでと同じ手法で評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度にはRainbow-Creマウス(Rb/Cre遺伝子)のRb/Rbホモ体を抽出できるようにし、2つの Rb遺伝子でTamoxifen投与後ランダムに3色発色する傾向の組み合わせにより、隣接細胞同士が6色の異なる発色を示すマウスモデルを確立した。蛍光発色を分離するための共焦点顕微鏡の設定を工夫したり、観察法の確立に時間をかけた。さらに一度MI手術を施行した後、2-4週間後に移植を行う手技の確立も行った。BAT細胞の採取・3次元培養の手技も確立したが、その後は上記の手技の確立に時間をかけたため、当初の設定より費用がかからなかった。今後は、上記マウスに移植療法を10匹以上行って行く予定であり、失敗例の分も含めると、大量のBAT細胞の培養が必要になる。そのため、細胞採取用のマウスおよび培養のための培養液や栄養因子などの試薬の消費伴う支出が増加すると考えられる。移植療法はどの時期に行うと心筋再生の促進効果・および心保護効果が高いのか検討を行う必要があり、MI後2週間および4週間など時期を振って同様の観察を行うとすると、さらに必要試薬の消費が見込まれる。
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