本研究は心筋特異的多蛍光発色マウスマウスモデル(Rainbow-Cre マウス)を用いて、MI後に褐色脂肪組織(BAT)細胞の移植療法等を行い、心筋細胞分裂促進作用を調べる。さらに、再生出現部位を特異的に採取・解析することで新規心筋再生促進因子を同定し、新たな再生医療につなげることを目的とした。平成29年度にはRainbow-Creマウス(Rb/Cre遺伝子)のRb/Rbホモ体を作成し、心筋梗塞(MI)群でsham群に比べ、再生頻度が増加していることを確認している。平成29年度から31年度にかけては、このマウスへの細胞移植療法を確立させた。褐色脂肪粗機(BAT)細胞を、マウスの背部、および腋窩部より採取、増殖因子の入ったメソカルト等とともに10-14日培養し、その後いったん分離し、PuraMatrixとあわせて3次元培養を行った。MIを作成したモデルマウスを2-4週間後に再度胸腔を解放して、心筋梗塞ができていることを確認後、上記のBAT+ PuraMatrix移植群とVehicle単独移植群にわけ、移植処置を安定して行えた。移植後4-8週後も細胞が残存することを確認しており、また心エコー・MRIによる評価では移植群で、コントロール群に比較して、心臓のリモデリングを抑制し、心機能を保持している傾向を確認した。この手法を上記Raibow-Creマウスに適応し、安定して心筋組織切片を得ることができた。これにより、細胞移植時に増殖促進部位を特異的に捕らえる手技を確立できた。 令和元年から4年度にかけては、コロナ禍の影響をうけ、実験の施行が難しい時期もあった。BAT細胞の自家移植を行うことで、同種移植よりさらに移植細胞の生着を高めることができた。同手法による移植群を解析中であり、増殖部位の同定と同部位からのサンプル収集、発現因子を解析して、公表につなげていく予定である。
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