研究課題/領域番号 |
17K17637
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大島 渚 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (20791932)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | EBV陽性DLBCL / DNAメチル化 / メチル化アレイ |
研究実績の概要 |
68検体のDLBCLのリンパ節組織の薄切を行い、標本でリンパ腫細胞含有率を判定した。このうち腫瘍含有率が70%以上と高率な58検体からDNAとRNAの抽出を行った。13検体のEBV(+)DLBCL、13検体のEBV(-)DLBCLから抽出した500ngのDNAについて、バイサルファイト処理を行い、網羅的DNAメチル化アレイInfinium 450kを試みた。EBV(-)DLBCLは13例とも高メチル化形質を示した。一方、EBV(+)DLBCLのうち2検体では超高メチル化形質を認め、4検体は高メチル化形質、7検体は不死化リンパ球と同等のレベルの低メチル化形質を示した。低メチル化形質を示した7例は背景にT細胞リンパ腫や免疫抑制剤使用者等のT細胞機能不全を含む免疫不全があるDLBCLだった。高メチル化を示した症例、超高メチル化を示した症例は高齢者が含まれるものの背景の免疫不全の存在は明らかではなかった。 前述のEBV(+)胃癌と比較してDLBCLで高メチル化を示した遺伝子は515遺伝子であった。そのうち、超高メチル化を示したEBV(+)DLBCL群で特異的にDNA高メチル化を示した遺伝子は463遺伝子であった。 EBV(-)DLBCLは全例が高メチル化形質を示し、EBV(+)DLBCLでは、背景の免疫不全の有無でDNAメチル化形質が大きく異なることが示された。免疫不全の背景のないEBV(+)DLBCLではEBV(-)DLBCLには見られることのなかった超高メチル化形質が認められており、これらの比較で同定された超高メチル化遺伝子群がEBV感染によるDNAメチル化異常の標的遺伝子と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ節検体の薄切に時間がかかったが、抽出したDNAで網羅的DNAメチル化アレイInfinium 450kを施行する部分は順調に進行した。DNAメチル化アレイの網羅的解析に関しても順調に進行した。 現在RNAシーケンスの準備を行っており、ライブラリ作成段階まで終了している。
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今後の研究の推進方策 |
免疫抑制剤使用者やT細胞性リンパ腫を合併する等宿主のT細胞機能が低下した際に生じるDLBCLでは、EBVの潜伏感染パターンが非常に抗原性の強いものであるにも関わらず排除されず形質転換を繰り返し不死化、ひいては腫瘍化につながっており、宿主細胞のDNAメチル化異常と難治化に直接的な関連性がないことが推察された。EBV(-)DLBCL、EBV(+)DLBCLをDNAメチル化で層別化し、これらの遺伝子群の発現や機能解析を行い、難治性EBV(+)DLBCLの新規治療の開発につながることが期待される。 現在遺伝子発現の網羅的解析のために使用するRNAシーケンスのライブラリ作成を終了している。 今後はEBV(+)DLBCL発症に関わる本態解明と、治療抵抗性の原因となる機序を明らかにすべく、遺伝子発現のデータとDNAメチル化データを併せて網羅的に解析し、論文化につなげていく方針である。
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