研究実績の概要 |
本研究では微小電場重畳型変位電流評価法(AC-DCM)を新しく構築して電気化学発光セル(Light-emitting electrochemical cell (LEC))に適用し,三角波電圧に対する応答でイオンの,交流電圧に対する応答で電荷の挙動を同時に観測することを目的としている.昨年度まででAC-DCMの測定系の構築とLEC作製方法の確立を終えており,AC-DCMをLECに適用することで,順方向時のインピーダンス(Z)よりも逆方向時のZの方が小さいという結果を得ていた.しかしながらZを算出する方法が確立できておらず,特に位相差(θ)のばらつきが大きく,得られたZの差に関して詳細な議論を行うことができなかった.そこで今年度はZを算出するプログラムを新しく作成して研究を進めた. AC-DCMでは,三角波に微小な高周波の交流を重畳した電圧を用いる.印加電圧にも応答電流にも交流成分が重畳されていることから,この交流成分の一周期分を抜き出し,その最大値と最小値を抽出してZを求めた.しかしながらこの方法ではノイズの影響を多大に受けてしまう.そこで抜き出した応答を交流成分と電圧に比例する関数でフィッティングしZを求めるプログラムを作成した.その結果Zのみならず,θに関しても信頼性の高い結果を得ることができた. 三角波の周波数を10 Hz, 交流の周波数を625 Hzで測定を行った場合,昨年度報告した結果通り逆方向掃引時より順方向時のZの方が大きいことがわかった.また今回新たに,θは掃引方向によらず同様の電圧依存性を示すことが分かった.その結果,Zの差が大きい領域では容量成分が支配的であることが明らかとなった.この結果は順方向と逆方向で電気二重層の形成が異なることを示唆している.今後はさらに解析を進め,電気二重層と電荷注入の相関を明らかにする.
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