研究課題/領域番号 |
17K17649
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小坂 理子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50784873)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 現地調査 / 原著論文 / 国際学会 |
研究実績の概要 |
当初の計画通り、調査地(インドネシア・西ジャワ州スメダン県の農村)を訪問しての現地調査を実施した。当地ではまず、質問紙をもとに、過去に収集した基礎情報の確認とアップデートをおこなった。くわえて聞き取りと観察によって、1)出生や移動による住民の増減と新たな住民の基礎情報、2)5年ごとの食事・身体活動調査の背景情報となる、健康観や食に関する意識、3)村落の過去のできごとと当時の食習慣、等について情報を収集した。 とくに食行動・食選択に関して、人びとは個食傾向であること、体によい食べものの認識が異なっていることに関心をもち、重点的に聞き取りをおこなった。個食傾向の背景には、個食がしばしば問題視されている欧米や日本とは異なった家族のありかたがうかびあがった。すなわち、食卓を囲んでの家族団らんを理想とするに至った近代家族の特徴が、インドネシア・西ジャワ農村ではあまりみられないことが個食傾向の一因となっていると考えている。また、食物に対する、身体に良い・悪いという判断は、年齢によって異なる傾向を示すことが示唆された。すなわち、若年齢層ではメディアや学校教育が判断に強く影響するのに対し、高齢層では自身の経験に基づいた判断をするという特徴がみられた。そのため、身体に良い、あるいは悪いと判断する食物の種類も年齢によって異なる傾向がみられた。 本研究対象地域でこれまでに行った調査の成果は、本年度、学術論文としてPLOSONEへ投稿し受理・掲載されたほか、23th Conference of Society for Human Ecologyにて口頭で発表し、他の研究者とともに議論し情報交換をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成30年度は、1)乾期期間中に現地を訪問し質問紙調査を実施すること、2)データの整理・分析、学会発表および学術雑誌への投稿論文執筆、を予定しており、いずれも実現できた。 調査地やインドネシア側カウンターパートとの連絡も円滑に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、これまでに収集したデータや分析結果をまとめて学会発表と学術雑誌への論文投稿をおこなう。調査対象村落でこれまでに収集したデータは質的なもの、量的なものを含め多岐にわたり、じゅうぶんに整理されたとはいいがたい。これらを統合して研究対象の全体像や進捗状況の全体を俯瞰し、最終年度(平成32年度:ベースライン調査から5年後のフォローアップ調査を実施予定)に臨みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
最も大きいのは旅費を支出しなかったことである。平成30年度はインドネシア現地調査を実施したが、これを他の調査と乗り合わせることで、旅費や研究補助者の人件費等を他の研究経費から支出することができたためである。 当初計画では平成31年度に海外での学会発表は予定していなかったが、これまでに収集したデータやその分析は発表すべき段階にあると考えているので、海外での学会発表の参加費や旅費に充当することを予定している。
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