研究実績の概要 |
本研究では, これまでの日本における科学コミュニケーションの担い手としての科学技術系人材像の変遷とその育成の政策的展開のダイナミクスを, 科学技術白書の定量的・定性的分析, 及び言説間相互の関係性の精査により明らかにする. これにより,日本の科学コミュニケーション政策が抱える構造的な課題を明らかにすることを目指す. 2019年度は、前年度に引き続き、「②定量的・定性的分析の結果と政策的展開の対応関係(反映,言及の有無)の精査」を行うと共に、関連する審議会資料や科学技術政策と高等教育政策との関係性についての議論に関する国内外の関連文献を収集し、その議論の特徴と経緯の整理・検討した. その研究成果を取りまとめ, 国際査読誌に投稿した. 加えて, 高等教育政策や科学技術イノベーション政策、人材育成政策にかかわってきた関係者へのヒアリング(「③関連政策担当者や国内外のキーパーソンへのインタビュー調査」)を行った結果, 科学コミュニケーション人材の議論は, その他の研究支援に関わる「専門職」をめぐる議論と密接に関わってくることから, 大学の研究活動/機能を支える研究関連実務者の「専門性」やそれらを担う人材のキャリアパスをめぐる課題という枠組みでの政策評価が必要だと判断し, 科学コミュニケーションに限定しない科学技術系の研究支援人材に関わる各種ファンディング事業の成果が, どのような観点で評価されているのかのメタ分析のための予備調査を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果を取りまとめ、当該分野で定評のある国際査読誌に投稿したところ、研究成果をより精緻なものとするために, 科学コミュニケーション人材に限定しない各種研究支援人材政策との比較, 政策評価に関する追加分析の必要性が指摘された. そのため, 現在その追加調査・分析を開始したが, COVID-19対応もあり, 関係者へのヒアリング等でやや遅れが出ている. なお大学院教育政策における科学コミュニケーション教育の扱われ方に論点を絞った日本語での論考が, ブックチャプターとして収録される予定である.
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今後の研究の推進方策 |
投稿論文の査読対応として, 科学コミュニケーション人材に限定しない各種研究支援人材政策との比較, 政策評価に関する追加分析を行う. 特に大学の研究活動/機能を支える研究関連実務者の「専門性」やそれらを担う人材のキャリアパスをめぐる課題という枠組みから科学コミュニケーション政策を評価するため, 研究支援人材に関わる各種ファンディング事業の成果が, どのような観点で評価されているのかのメタ分析を行う.
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