研究課題/領域番号 |
17K17656
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白 春花 東京大学, 教養学部, 特任講師 (40791976)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 文処理 / 曖昧性構文 / 主要部後置言語 / 第三言語 / バイリンガル / 関係節 / モンゴル語 / トルコ語 |
研究実績の概要 |
今年度は、日本語母語話者、トルコ語母語話者及びトルコ語母語話者の日本語学習者を対象に、自己ペース読み実験を実施し、そこで集めたデータをまとめ、コロラド州ボルダー市で開かれたThe 32nd CUNY Conference on Human Sentence Processing会議に発表しました。今回のデータでは、学習者はオフライン処理においては第一言語の影響を受けるが、オンライン処理においてはむしろ目標言語の母語話者の処理プロセスに近い処理を行なっていることが示唆されました。また、英語のような主要部前置言語で見られた曖昧性構文によるアドヴァンテージが今回の日本語母語話者を対象とした研究では見られていないだけではなく、むしろ、曖昧性構文の方が処理コストが高く、デスアドヴァンテージが見られたことが確認されました。そして、学習者でも目標言語と同じくデスアドヴァンテージ現象が見られました。 そして、モンゴル語ー中国語バイリンガルの日本語学習者を対象に質問紙調査を行い、その結果をまとたものが、The CGCS Journal of Language Research and Educationという雑誌にアクセプトされました。本研究の結果では、バイリンガル話者が第三言語の文を処理するとき、既習言語の第一言語及び第二言語両方とも影響することが示唆されました。そして、既習言語及び目標言語間の統語的な類似性が影響の強さと関わっていることも示唆されました。具体的に、目標言語の統語構造と類似する言語のほうがそうではない片方の言語に比べ、第三言語の文処理における影響力が強いことが示唆されました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モンゴル語におけるパソコンのフォントと実験パラダイムの認識するフォントが異なることにより、モンゴル語母語話者における読み実験が進んでいません。しかし、それを改善するため、文字を必要としない四角世界パラダイムという実験手法を用いる予定です。その場合、実験材料文に適切な絵、かつ視覚世界パラダイムを用いた時に被験者にバイアスをかけない絵を書くことが重要であるが、そこを模索している段階にいます。
|
今後の研究の推進方策 |
実験と研究論文投稿、両方から進めて行く予定です。 実験面において、 1)日本語の関係節の曖昧性構造を解析する際、名詞句の有生性がどのような役割を果たしているか、それを明らかにする実験を行う予定です。その主な原因として、本研究と先行研究で得られた結果が一致しないことが有り、その主な原因は材料文における名詞句の有生性であるためです。そして、2)モンゴル語母語話者及びモンゴル語母語話者の日本語学習者を対象に視覚世界パライダムを用いて関係節の構造的な曖昧性構文の処理プロセスを調べる予定です。
研究論文投稿において、まず、中国語母語話者及び中国語母語話者の日本語学習者、そして、トルコ語母語話者、トルコ語母語話者の日本語学習者を対象とした実験の結果をまとめ、次年度をめどに投稿する予定です。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は科研費を必要とする主なことは二点ある: 1)二つの実験を行う予定である。その一つは、日本語母語話者を対象とする眼球運動測定方法を用いた実験を行う。日本語母語話者を対象とした実験では、日本語母語話者は“バルコニーに立っている男性教員の姉さんは…”のような関係節曖昧性構文を解釈する際、“男性教員がバルコニーに立っている”という解釈より“男性教員の姉さんがバルコニーに立っている”という解釈を好むことが明らかになったが、なぜそのような解釈を好むか、そして、文処理のどのタイミングで再解析が起きているか、まだ明白になっていない。今回の実験を通じて、上述の二つのリサーチクエスチョンを明らかにすると同時に、名詞句の有生性がどのような役割を果たしているか、それを明らかにする実験を行う予定です。もう一つは、モンゴル語母語話者を対象に、彼らの関係節曖昧性構文の処理プロセスを眼球運動測定方法を用いて調べる。その場合、第三要因を減らすため、モンゴル共和国に行く必要がある。実験協力者に支払う謝礼金及び現地にいく航空代などが生じるため、科研費が必要である。 2)中国語母語話者、中国語母語話者の日本語学習者、トルコ語母語話者及びトルコ語母語話者の日本語学習者を対象とした実験のデータを整理して、欧米雑誌に投稿する予定である。そこに英語母語チェック作業が必要であるため、科研費が必要である。
|