研究課題/領域番号 |
17K17663
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久野 遼平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (60725018)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 異質情報ネットワーク / 通関データ / 産業構造 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度の成果を踏まえ日米通関取引の企業関係や取引内容、企業の産業構造などの異質な情報を考慮した取引関係の変遷モデルを構築する予定であった。そうすることによって日米の貿易環境の変化に関連する企業関係の変遷を深く浮かび上がらせることが可能になり本研究課題の目的を達成する上では必須のステップと言える。 しかし今年度の中頃に異質な情報を利活用する研究に関して、上記の日米通関取引に限定せずもっと大きな枠組みで分析する手法を開発する方法に検討がついた。そのため今年度は通関取引に限定せずより大きなデータベースの中で異質な情報を考慮できるモデルの構築に努めた。データベースは世界中の上場企業およびその周辺の企業を対象とし企業関係も仕入れ・販売関係以外にも債務・債権関係、ラインセンス関係など多様なものを含むものとした。また企業や財以外にも人や株式の所有構造の情報もデータベースの中に含めることにし情報量は飛躍的に増大した。このデータベースの中で通関取引に焦点を絞った研究に最初から取り組むこともできたが、通関取引を分析する上で利活用できるデータベースの情報量は他の問題設定に比べて比較的に小さくなってしまう。また異質な情報の利活用を検討していく上で、最初は広範にデータベースを活用したモデルを構築した方が見通しがよくなると判断したため今年度はより大きくデータベースを有効活用できる投資除外リストの予想問題に焦点を当てた。 その結果として異質な情報を含んだデータベースを用いることによって飛躍的に予想精度が向上することを示すことができた。一見すると本研究に関係しないように思えるが、異質な情報を含むデータベースの分析に対して洞察を得ることができるモデルを構築した功績は大きく同様のアプローチで通関取引も分析できる。今後は通関取引に関しても同様のモデル手法で分析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は当初の予定よりはるかに成果が出たと言える。その根拠となるのは自分が当初計画していた通関取引に限定した問題設定よりもより広く一般的な問題設定を解けるようになったことである。 前述の通り当初は通関取引上の企業の仕入れ販売関係、取引内財、産業構造などの異質な情報のみを用いたモデルを構築する予定であった。それが通関取引に限定せずより大きなデータベース構造の中で異質な情報を考慮できるモデルを構築できるようになった功績は大きい。より広範な問題設定において解決法を導いたことによって、本研究が対象とする通関取引に関してもより柔軟な視点から分析が可能になる。これは当初予定していたよりも極めて大きな成果であり特筆に値する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度開発したモデルをいかして今後はメインの課題である通関取引の分析に取り組んでいく予定である。通関取引は時間発展するバイラテラルなネットワーク構造がその特徴である。これは前述のモデルが対象としているネットワークと比較すると異質情報ネットワークとしては簡素なものであるが、より詳細に時間発展する様子が捉えられるという点に分析の醍醐味がある。時間発展するネットワークの分析手法自体は過去研究でも多く研究対象になってきたものであるが、異質な情報を含むネットワーク構造をいかしたモデルになると先行例は少なくなる。最終年度である今年度はデータのこの特性を生かすことができるモデルを構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
サーバーとデータに関する費用が思いのほか安く済んだため次年度使用額が発生した。
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