研究課題/領域番号 |
17K17671
|
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
甕 聡子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特別研究員(PD) (70795228)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 海水Mg/Caモル比 / 生体鉱物 / カルシウム炭酸塩 / 鉱物相 / 褐虫藻 |
研究実績の概要 |
現生では造礁サンゴやシャコガイは共生藻を有し、その骨格や殻はアラゴナイトで形成されている。しかし、過去には現在と異なるMg/Caモル比をもった海水組成の時代や褐虫藻と共生関係がなかった時期もあったと考えられる。この違いによりアラゴナイトではなくカルサイトが形成されていた可能性がある。どちらの鉱物を形成していたかは、これらの生物源炭酸塩から復元される古環境指標の値に大きく影響する。本研究ではサンゴとシャコガイの飼育実験を行い、どのような環境下でアラゴナイトもしくはカルサイトが形成されるかを検討する。平成30年度は、造礁サンゴを褐虫藻と共生しているものといないもので複数のMg/Ca海水モル比で飼育した。サンゴは昨年度よりも褐虫藻の取り込みが多く、また一か月程度の飼育を行うことができた。得られたサンゴ骨格はマイクロXRDを用いてバルクで鉱物相同定を行った。褐虫藻の有無により骨格の微細組織に相違が生じるかを検討するため、集束イオンビーム装置でサンゴ骨格の任意の骨格部位から切片を制作した。切片は透過型電子顕微鏡で鉱物相の同定、結晶サイズや組織の観察を行った。シャコガイについては、人工海水での飼育方法が確立されていないため、飼育方法の確立を目指した。飼育方法として、シャコガイ受精卵の採集後、褐虫藻の取り込みを行い、その後人工海水に移行させる計画とした。しかし、褐虫藻の取り込みがなされず、人工海水での飼育方法確立には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では褐虫藻の影響を検討するという目的から、造礁サンゴとシャコガイの形成する炭酸塩を試料とした。造礁サンゴ骨格については、褐虫藻の有無といくつかの海水のMg/Caモル比を再現した環境でサンゴを飼育し、その骨格を得ることができた。マイクロXRDを用いて得られた骨格の鉱物相を同定した。いくつかの試料について、骨格の微細組織観察を行うことができた。また、集束イオンビーム加工装置を用いて、任意の骨格部位の切片を作製し、透過電子顕微鏡で観察を行っている。この観察方法により、骨格部位による微細組織の違いがあることが明らかになっている。 シャコガイについて飼育方法の確立を目指した。しかし、褐虫藻の取り込みが確認されず試料を得ることができなかった。よってシャコガイについては計画が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
海水Mg/Caモル比ごとの骨格構造および鉱物相の分布や結晶の形などの結晶組織観察を進める。シャコガイの飼育については、平成30年度に行った飼育実験を通して得た課題をもとに、飼育条件の改良を行い、試料の確保を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
シャコガイ飼育実験回数を2回と想定していたが、1回のみであったため。飼育実験用の実験器具の購入費に充てる予定である。
|