超高齢社会を迎えた我が国において、排泄障害とともに生きる高齢者や障害者の数は増え続けている。排泄障害を持ちながら、心理的にも社会的にも活き活きとした生活を送るためにはどうすればよいのか?本研究は、排泄障害のある高齢者や障害者が心理社会的健康を増進させるための実践的方法論をアクティブエイジングの観点から構築することを目的とした。 最終年度は、これまで実施してきた先行研究のレビュー、高齢者大規模コホート研究のデータ分析、排泄障害当事者を対象とした質的研究の結果を統合し、頻尿、便秘、失禁の予防や早期発見、改善に役立つ具体的な情報を整理した。さらに、老年学や排泄の専門家、排泄障害当事者とのディスカッションを実施し、排泄障害当事者が直面するポリファーマシー(多剤併用)や災害時の問題に関する情報についても整理した。最終的に、全ての情報を整理統合し、ウェブ閲覧のできる分かりやすい小冊子にまとめた。排泄障害を自覚している者だけではなく、排泄障害にあまり関心を持っていない者の行動変容を促すため、この小冊子にはナッジ理論を参考にしたデザインを採用した。 本研究により提示された排泄障害を越えてアクティブエイジングを実現するための実践的方法論は、排泄障害とともに生きる高齢者や障害者の行動変容に直接的に資するものであり、医療従事者や支援者が排泄障害当事者のセルフケアを促す際の有用な資料となることも期待できるものである。
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