本研究課題で想定していた新しいN体モデル構築法の開発は、計画通りの日程で計算コードの作成は行うことが出来た。計算結果は理論上の想定通りのふるまいを見せ、原理的には狙ったような計算が可能であることを確認することが出来た。しかし、現実的な使用に耐えうるような精度を達成するためには、予想をはるかに上回る計算資源を投入しなければならないことが分かった。理論上は可能であるが、巨大なスーパーコンピュータで大規模な並列計算をする必要があり、現在私が使用可能な共同利用の計算機ではその規模の計算を成し遂げることは困難と思われると結論した。計算コードの改良も大いに奮闘したが、やはり劇的な改善というまではいかず、現状ではよほど簡単化された状況でないと適用できないことが分かった。しかし、アイデアとしては決して悪くなく、今後、計算機の発展や並列計算法の進展により、いずれ達成できる可能性もあり、今後も努力を重ねていきたいと思う。 上記の理由により、研究計画は大きく方針転換を迫られた。しかし、本来の研究テーマである、矮小銀河の暗黒物質分布の推定というテーマに沿って、協力研究者とともに研究を進め、共著の査読論文を複数発表することが出来た。また、関連する銀河動力学に関する研究テーマで、私を主著者とする査読論文を当該期間中に5編(うち1編は査読審査中)、共著者として加わった論文を5編(すべて印刷済み)発表することが出来た。このように、研究計画の見直しは迫られたものの、本科研費の援助の下に関連分野で多くの成果を上げ、非常に生産的に研究を行うことが出来たと考えている。
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