研究課題/領域番号 |
17K17680
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
根本 充貴 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (10451808)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 解剖学的ランドマーク / 深層畳み込みニューラルネットワーク / プレトレーニングモデル / 転移学習 |
研究実績の概要 |
医用画像認識の研究において,病変を含むデータを大量収集するのは容易ではない.本研究の目的は,健常者の症例からもデータ収集ができる解剖学的ランドマーク(LM)データを用いた深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep CNN)の事前学習による,効率的な3次元医用画像上の病変認識処理の深層学習法の確立である.H30年度は,LMによるプレトレーニングに注力した複数の実験的検討を行った.その成果は,2019年度の国際会議および国内学会で発表予定(採択済み)である. 最初の検討では,代表的な20LMのみに検出対象を絞り,VGG Netを基礎としたDeep CNNの最適化を行った.LMは解剖学的な局所構造に定義される1点であるため,それに合わせて入力サイズも調整した.加えて,入力画像の2.5D化(元の3次元でデータから複数の特徴的スライスのみを抽出する画像情報圧縮法)を採用することで,Deep CNNの学習が収束しやすくなることを確認した.120例の体部CTから収集されたLM画像データ2,358パッチによる3-fold交差検定での性能検証では,97.2%のLM認識正答率を得た.LMの種類を60に増加させた検証も始めており,現在94.4%のLM認識正答率を実現している. また,転移学習による医用画像認識タスクの有用性に関する予備検討として,CIFET-100で学習済みのDeep CNNで得られる特徴量を用いた20LM(2.5D画像パッチ)の認識性能検証も行った.その結果,84.2%の認識正答率となり,医用画像認識に対する転移学習の有用性を実験的に示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転移学習による高精度認識処理の実現のためには,認識性能の高いDeep CNNプレトレーニングモデルが必要といわれている.H30年度の研究成果により,プレトレーニングモデルとして十分な性能(20LMの認識率:97.2%,60LMの認識率:94.4%)のDeep CNNが得られていると考える. 加えて,LMデータを用いた転移学習による医用画像認識タスクの有用性に関する予備検討から,本研究の良好な見通しも得られている.
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今後の研究の推進方策 |
頭部MRアンギオグラフィー上の脳動脈瘤検出処理や胸部CT上の肺結節検出処理,PET/CT上の原発性・転移性病変検出処理に,転移学習を適用する.Deep CNNプレトレーニングモデルは,自然画像データでプレトレーニングしたモデルと,我々の研究成果であるLMデータでプレトレーニングしたモデルの両方を用いる.複数の病変認識タスクによる多角的な実験的検証によって,LMデータでのプレトレーニングモデルの有用性を示す予定である. 事前学習CNNの適用方法に関しても検討する.①事前学習済のCNNパラメータを初期値として,任意の病変認識問題に再学習(Fine Tuning)する方法と,②事前学習済CNNの再学習は行わず,事前学習済CNNが出力する特徴量をSVMなどの異なる識別関数の学習に用いる方法の2通りを行う. また,より多種類(100種類以上)のLMを用いたCNNの事前学習についても検討を進める. CNN事前学習に用いるLMデータの規模拡大も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内学会・研究会・国際会議での発表回数が,予定より少なかった.また,研究用データベースの作成(解剖学的ランドマークの入力作業など)に伴う謝金の支払い等が発生しなかった.
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