本研究は、電極プローブを頭蓋下の広い範囲に分散配置し、感覚・運動に関わる神経活動を横断的に収集することによって、脳内に存在する任意の感覚・運動に関する情報の抽出を目指したものである。この目的のため、前所属先にて2019年12月までにラット脳を対象とする計測・刺激を実現するための神経プローブや計測・刺激系、動物実験環境といった要素技術を開発し、さらにこれらを統合してラットを併走または搭載して動作する全方位移動型ロボットを開発した。また、要素技術の開発途上において、「自発的だが統制された歩行動作の誘発」に関連する動物実験手法が派生し、本研究計画の目的への寄与も期待できることから、引き続き詳細な検討を加えてきた。 現職に就いた2020年1月以降は新たな動物実験を行わず、前年度までに実施した実験結果の整理を行う予定であった。しかし2020年度から2021年度上半期にかけては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため出張機会が限られ、実験系の条件確認やデータ回収等の作業が先送りされた。2021年度下半期より主たる実験データの回収が進み、解析を進めた結果、上記「自発的だが統制された歩行動作の誘発」について論文として成果をとりまとめた。また、多点電極プローブによって得られた神経活動情報を解析するための手法として、ガウス過程を用いた脳情報のデコーディング手法を開発し、運動情報や脳表面における電位分布に対する解析手法として応用する可能性も探っている。
|