研究課題/領域番号 |
17K17687
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北澤 啓和 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (10773385)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 金属クラスター / ナノ粒子 / 触媒 / 合金クラスター |
研究実績の概要 |
粒径2nm以下の原子数が数個から数十個で構成されるクラスター領域において金属クラスターの触媒作用は、構成原子数、サイズ、組成によって大きく変化するため、これらを精密に制御することで、新しい金属クラスター触媒の開発が期待できる。更なる、金属クラスターの触媒機能を解明するためには、これまでの単一元素種だけではなく、多元素金属クラスター触媒が必須となり、その精密な合成法が必要となる。 サイズ・構成原子数を制御した多元金属クラスターを合成する際、液相法等の一般的なナノ粒子の合成法では 、任意の組成・元素種で多元金属クラスターを合成することは困難である。本研究では、配位サイトを有する有機配位子及び高分子を用いることで、金属塩を錯形成後、還元や焼成することで多元金属クラスター担持触媒の精密合成と触媒機能の創出を目指している。 本年度は、樹状高分子(デンドリマー)を鋳型としたサイズ制御パラジウム(Pd)クラスターを合成し、鈴木-宮浦カップリング反応における触媒機能への影響を解明した。剛直で疎水的な骨格からなるフェニルアゾメチンデンドリマー(TPM G4)を鋳型とし、新たにサイズ制御したPdクラスターの精密合成が可能であることを見出した。また、柔軟で親水的な骨格からなるポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM-OH G4)を鋳型とし、サイズ制御したデンドリマー内包Pdナノ粒子を合成して、プロトン性極性溶媒中ではPd60@PAMAM-OH G4、非プロトン性極性溶媒中ではPd60@TPM G4の触媒活性が各々有利であることを見出し、XAFS等から、各々のデンドリマー骨格によるナノ粒子の周囲環境の相違が触媒活性に影響を与えることを明らかにした。今後は、デンドリマーによるサイズ制御した金属クラスターの精密合成法を用いて、多元金属クラスター担持触媒の合成に展開する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デンドリマーを鋳型とすることで、金属クラスター(Pdクラスター)の精密合成が可能であること、更にデンドリマー骨格の種類により触媒活性が変化することを見出し、金属クラスター担持触媒を合成する際に最適な周囲環境が明らかとなり、多元金属クラスター担持触媒を合成する際の条件にめどがたったと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
配位サイトを有する有機配位子及びデンドリマーを用い、多元金属クラスター担持触媒の精密合成を引き続き行う予定である。さらに、単一金属種とは異なる多元金属クラスター担持触媒の触媒機能を解明していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、研究機関の異動に伴い研究の立ち上げに時間を要し、物品費の使用が予定より遅れた。次年度は、金属塩と配位サイトとの錯形成挙動を確認するため紫外可視近赤外分光光度計、担持触媒合成のため電気焼成炉一式を購入予定である。また、XAFS測定のための旅費、迅速に研究成果を発表するため学会参加費や論文投稿費に使用する予定である。
|