研究課題/領域番号 |
17K17688
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁美 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (60644094)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原始卵胞 / 卵母細胞 / マウス |
研究実績の概要 |
哺乳類卵巣において、卵母細胞は体細胞に囲まれて「卵胞」とよばれる球状の細胞の集合体を形成している。もっとも未成熟な原始卵胞は休眠状態で長期間卵巣内に蓄えられており、刺激を受けて活性化すると卵胞成熟過程に入り、性周期に従って一次卵胞、二次卵胞、胞状卵胞と成熟して排卵に至る。健康なヒト女性の卵巣は、思春期以降、月に1個ずつ、合計400個ほどの成熟した卵子(卵母細胞)を約40年間排卵し続ける。このように長期間安定した卵胞成熟を保つためには、卵子の供給源である休眠中の卵母細胞の健全性を維持し、適切に管理する機構が重要である。申請者は、タンパク質のアルギニンをメチル化する酵素Prmt5が休眠中卵母細胞を保護し、活性化後に正常に成熟していけるようにオルガネラの状態や遺伝子発現を管理する役割を果たしていると考え、その分子的作用機序の解析を進めている。平成29年度は(1)Prmt5によるオルガネラ制御の検証、(2-1)Prmt5ノックアウト卵母細胞のトランスクリプトーム解析、(2-2)Prmt5過剰発現マウスの作製、を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)と(2-1)を行うため、まずは休眠中の卵母細胞をFACSにて収集し、Quartz-seq法にてcDNAを増幅するための最適条件を検討、確立した。 (1)Prmt5によるオルガネラ制御の検証:コントロールとPrmt5 cKOにおける遺伝子発現量を定量的RT-PCR (qRT-PCR)をもちいて比較したところ、オルガネラ関連遺伝子で顕著な変化を示す遺伝子は発見できなかった。さらに、オルガネラ制御関連遺伝子のうち、Prmt5のメチル化標的となりうるペプチド配列を持つDrp1およびMarch5のメチル化アッセイを行ったが、どちらもPrmt5によるメチル化は受けていなかった。以上より、Prmt5 cKOにおけるオルガネラの異常は二次的なものである可能性が高いことが示唆された。 (2-1)Prmt5ノックアウト卵母細胞のトランスクリプトーム解析:コントロールとPrmt5 cKOの3、7、10週齢卵巣から休眠中の卵母細胞を収集、Quartz-seq法を用いた次世代シーケンシングを基礎生物学研究所との共同研究として行った。平成30年度よりシーケンシング結果を解析していく予定である。 (2-2)Prmt5過剰発現マウスの作製:CAG-CATの系と卵母細胞特異的Cre(Gdf9-iCre)を用いて組織特異的なPrmt5過剰発現マウスの作製を試みたが、発現するマウス系統を確立することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、次世代シーケンシングを用いたトランスクリプトーム解析を中心にすすめ、まずは1報の論文をまとめることに注力する。昨年度作製に失敗した過剰発現マウスについては、他の手法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね使用計画どおりに助成金を使用した。マウスの飼育料金等が予想より抑えられたので、若干の余剰金が生じた。
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