研究実績の概要 |
当該年度は、疾患の認識に関する“illness representations モデル”を活用して女性特有癌に関連する疾患の認識の同定を行うことを目的とした。最初のステップとして、質問紙調査の項目策定のため、若年女性を対象としたグループインタビュー(5名ずつ2グループ実施済)および遺伝性腫瘍領域を専門とする認定遺伝カウンセラー(7名実施済)に対するインタビュー調査を実施した。若年女性のインタビュー調査から明らかとなった、一般的な乳がんと遺伝性乳がんの認識で異なっている要素や、遺伝カウンセラーへのインタビューを通じて明らかとなった未発症・若年女性に対する遺伝カウンセリングの態度(遺伝カウンセリング上、留意する点)は、質問項目を検討するうえで非常に有意義な情報となった。さらに、疾患の認識に関する国際比較を行うため、健常者に対する疾患認識の尺度:IPQ-RH (the Revised Illness Perception Questionnaire for healthy people)(Psychology and Health, 2007:22, 143-158)の日本語版を作成することとした。昨年7月に原作者の承諾を得て、現在、協力者(遺伝学の有識者)とともに翻訳作業を進めている。IPQ-RHの日本語版尺度が完成することで、様々な疾患に関する認識の調査に適用できるとともに、国際比較が容易となる。通常疾患の認識は患者もしくは遺伝子変異保持者を対象として作成されるが、当該尺度は健常者を対象としているため、遺伝性疾患に対する社会一般の認識を理解することにつながる。 また、昨年度は3報の論文(Mol Clin Oncol. 2017:7(1),98-102/医療と社会2017:27(2), 261-275/日本遺伝カウンセリング学会誌2017:38(3),69-75)が出版された。
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