研究課題
歯や骨の無機主成分として知られるハイドロキシアパタイトについては、従前よりその結晶構造から強誘電性または反強誘電性を持つことが示唆されてきた。結晶中の水酸化物(OH)イオンの配向が自発分極の起源であるとされるが、強誘電性・圧電性については、未解明な点が多い。強誘電ハイドロキシアパタイトが実現されれば、バイオマテリアルをはじめとする種々のデバイスへの応用が期待できる。強誘電性の起源と思われるハイドロキシアパタイトの結晶構造中のOHイオンは、大気雰囲気の熱処理による脱水にて空孔と酸化物イオンに置換され格子欠陥となる。本研究では、この結晶中の欠陥に着目し、これを制御することでハイドロキシアパタイトの電気的特性(強誘電性)についての知見を得ること、さらに、その特性を応用するための高い配向をもつ材料を作製することを目的とした。欠陥制御を可能にする水蒸気雰囲気中での熱処理装置を導入し、欠陥量制御の可否について検討した。試料を加熱しながら拡散反射法にて赤外吸収測定を行った。OH伸縮振動に帰属される吸収ピークは、約483Kを超えるとその半値幅が急激に増大した。これは、OHイオンの配向が相転移温度にて秩序―無秩序転移したこと反映した結果であると見られる。この結果は、水蒸気雰囲気にて熱処理したハイドロキシアパタイトのOHイオンが秩序化したことを示す結果であり、この欠陥制御した試料がOHイオンを自発分極とした誘電性を発現し得ることを示唆している。また、ドデカン二酸を用いた水酸アパタイトの形態制御を試みた。ドデカン二酸は二つのカルボン酸基と長鎖アルキルを持つジカルボン酸であり、水熱合成の際、あらかじめ添加することでアパタイト粒子の成長を制御しうることを見出した。さらに、本合成により得た板状アパタイト結晶を用いて配向性を持つ薄膜を作成することに成功した。
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Crystal Growth & Design
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