研究課題/領域番号 |
17K17692
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
星野 顕宏 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 非常勤講師 (80465137)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒトヘルペスウイルス / 原発性免疫不全症 / 機能解析 / 免疫機構 |
研究実績の概要 |
ヒトへルペスウイルス(HHV)は水痘帯状疱疹ウイルスやEpstein Barrウイルス(EBV)を含むウイルスの一科であるが、HHVに対するヒトの正常な免疫応答は不明である。本研究では、HHVに対する易感染性を示す原発性免疫不全症(PID、免疫機構に関する単一遺伝子病)患者を同定し、異常のある免疫機構とHHVとの関連を解析した。異常のあった免疫機構がHHVに対して重要であると考えられ、得られた知見は将来的には免疫調節による治療法の基盤の確立へと発展させていきたい。当該年度も前年度に引き続き、エクソーム解析を用いてHHVに対する易感染性を示すPID患者を複数同定して解析を行った。主要な内容は下記の通りである。 (1)SAP欠損症は通常は長期生存には造血幹細胞移植が必要であるが、軽症の臨床症状を示した1家系3患者を同定した。軽症であった理由として、メモリーCD8+T細胞の10%前後に、メモリーCD4+細胞の数%にリバータントを検出した。このことは、EBVに対する免疫応答にSLAMR-SAP経路が重要であるという従来の知見に加えて、将来的には遺伝子治療あるいは養子免疫療法がその治療に有用であることを示唆している。また、T細胞の10%前後を補正すれば、その有効性が期待できる可能性がある。 (2)EBV陽性リンパ腫や持続EBV血症を示した複数の患者から、CTLA4欠損症を同定した。また、診断済みのCTLA4欠損症15例において、血液中のEBVウイルスが陽性である頻度がコントロールよりも高いことを示した。以上のことはEBVに対する免疫応答にCTLA4が関与していることを示唆している。悪性腫瘍や自己免疫疾患の一部ではCTLA4製剤はすでに臨床応用されており、将来的にはEBV感染症を合併したCTLA4欠損症に対しても有用である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究計画は、前年度の①HHVに対して易感染性をもつ新規のPIDの同定、②in vitroでのHHVに対する免疫機構の異常の解析、に引き続いて③in vivoでのHHVに対する免疫機構の異常の解析であった。それによって、HHVに対して重要な免疫機構を同定することが可能となる。 当該年度に研究者は、PIDが疑われる臨床検体を用いてエクソーム解析を行った。その中から得られた遺伝子変異のうち、新規性のあるものあるいは病態として興味深いものを解析した。In vitroの解析には、HHVに対する免疫応答にはHHV特異的T細胞、NK細胞、NKT細胞が主に関与していることが知られているため、それらの数や分化、老化の程度を細胞表面マーカーを染色してフローサイトメーターで解析した。また、細胞株に変異を導入させてEBVに対する免疫応答を解析した。EBVについては、患者本人のリンパ芽球様細胞を樹立して用いた。 本研究は、同定したPIDの数が多ければ多いほど多くの成果を得ることが可能である。当該年度は、当初予定していたよりも多くの患者検体が得られたため、予定よりも多くのエクソーム解析を行った。そのため、③in vivoの解析に優先して②in vitroの解析を多く行った。進捗状況の遅れに対応するために、補助事業期間を1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間を1年間延長し、当初の研究計画を進めていく予定である。ただし、新規のPIDの探索を行う当該年度の研究によって成果が得られたため、平行して新規のPIDの探索を続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた初年度の研究計画から、多くの成果が得ることが可能であった。そのため、次年度にも初年度と同様の研究を継続して行った。翌年度の研究計画は、補助事業期間を1年間延長することで対応した。当初予定のなかった翌年度の研究に使用するため、次年度使用額(B-A)が0より大きくなった。
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