研究課題
CD72は主にB細胞に発現する抑制性の膜型レクチンであり、CD72が全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に重要なRNA関連自己抗原Sm/RNPを認識し、自己反応性のB細胞による抗Sm/RNP抗体の産生を抑制することでSLEの発症を抑制する(Akatsu et al, J Exp Med, 2016)。一方、我々は、CD72が、細胞外のC型レクチン様領域(CTLD)を介してヘパラン硫酸/ヘパリンを始めとする硫酸化糖鎖と結合することを糖鎖マイクロアレイにより見出した。そこで、本研究は、CD72のSLE発症抑制機能に対する糖鎖リガンド認識の意義の解明を目的とする。まず、新たにCD72CTLD組換えタンパク質を産生し、糖鎖アレイで見いだされたCD72のリガンド候補との結合性をELISA法により解析した。さらに、マウスCD72の多型のうち、正常型CD72aとSLE発症関連型CD72cをそれぞれ安定発現するマウスミエローマ細胞を樹立し、CD72の細胞表面発現量を調べると、CD72cの発現量がCD72aに比べて高かった。硫酸化阻害薬である塩素酸ナトリウムで細胞を処理すると、細胞表面のCD72aの発現量の低下の割合がCD72cに比べて大きくなっていた。マウスCD72の多型はCTLDに集約しており、予備的な実験によりCD72aCTLDに比べてCD72cCTLDの硫酸化糖鎖への結合性親和性が低いという知見が得られている。したがって、CD72は硫酸化糖鎖との結合を介して細胞内に移行し、CD72cの場合には硫酸化糖鎖への結合性が低下しているため細胞内移行が制限されている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
予備的な実験でHisタグ付きのCD72CTLD組換えタンパク質を用いていたが、糖鎖リガンドとの結合性の解析を行う上でタグの影響を排除するため、新たにHisタグを除いたCD72aCTLD組換えタンパク質の大腸菌での産生方法を樹立し、ELISA法により結合性を解析する系を確立した。CD72cCTLDの産生は成功していない。またCD72aとCD72cを安定発現する細胞株を樹立し、これら細胞株を用いて硫酸化糖鎖がCD72の細胞内移行を制御していることを示唆する結果が得られた。このように研究に必要な材料がほぼそろい、CD72の糖鎖リガンドの機能も示されつつあり、おおむね計画通りに進行しているといえる。
大腸菌でのCD72cCTLD組換えタンパク質の産生法の確立を引き続き検討するが、これが難しければ、CD72aCTLDを用いて糖鎖リガンド候補に対する結合性の解析を中心に行う。また樹立したCD72aおよびCD72cを安定発現する細胞株、さらにCD72欠損マウスのB細胞などを用いてCD72の細胞内移行が糖鎖リガンドにより制御されるかという点を引き続き解明し、CD72の糖鎖リガンドの役割を明らかにする。
H29年度とH30年度の2年間の研究計画で研究を遂行しているため。次年度も引き続きCD72cCTLD組換えタンパク質の産生方法の検討、樹立したCD72発現細胞株やCD72欠損マウスB細胞を用いたCD72の糖鎖リガンドの機能の検討等を遂行するための一般試薬、実験マウス、プラスティック器具等の購入費および研究成果発表費にあてる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 495 ページ: 854-859
10.1016/j.bbrc.2017.11.086
Front. Immunol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.3389/fimmu.2018.00820