研究課題/領域番号 |
17K17700
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
下村 周太郎 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40581822)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中世国家 / 鎌倉幕府 / 京都朝廷 |
研究実績の概要 |
鎌倉時代には京都朝廷と鎌倉幕府という2つの卓越した政治権力が日本列島上に出現し、統合的契機と分裂的契機の両面を多分に孕んだ政治社会構造が現出した。こうした鎌倉時代のあり方を分析する手がかりとして、本研究では、かつて法制史研究において言及がなされたものの、その後研究が必ずしも深められているとは言えない「公家武家並列文言」に注目し、その類似表現をも含めて幅広く関連史料を収集することを目的としている。日本中世の一次史料(同時代に作成された史料)は大きく古文書史料と古記録史料とに分類されるが、1年目(昨年度)に古文書を主な調査対象としたのに対し、2年目となる本年度は古記録を中心に史料の探索を行った。その結果、昨年度行った古文書を対象とした調査結果とは異なる傾向がうかがえた。すなわち、古記録においても「公武」や「公家武家」といった並列文言は南北朝期以降は広く見られるようになるものの、鎌倉期にはまず見出すことができないことが分かった。鎌倉時代の古記録は史料作成者が公家にほぼ限られることもあり、寺社や荘園現地関係者などさまざまな作成主体が想定される古文書と比較した場合、そこに反映されるであろう世界観や政治社会像にズレがあることを改めて認識することとなった。その上で、むしろ公家武家並列文言が南北朝期以降増大することは何を意味するのか、また、類似表現についてはさらに探索の余地はないのか、などといった問題が今後の課題として浮上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度調査対象とした古記録史料においては公家武家並列文言がストレートに現れる用例がほとんどなく、改めて類似表現なども含めた慎重な史料探索を行う必要性が認識され想定以上に時間を要することになった。また、研究実施場所となっている所属機関の建物で改修工事が行われることになり、図書の閲覧などに支障が生じたことも一因となった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究期間の最終年度にあたる。1年目の調査対象であった古文書史料および2年目の調査対象であった古記録史料について、改めてこの間に浮かび上がった課題も踏まえ補充調査を行うことで、より充実した研究の総括を目指したい。
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